ルームシェアはじめました | ナノ




 あの男が店から帰ってから、真宮さんの様子がおかしい。明らかにイライラしていて、それがあんまり酷いから店長から途中で帰されていた。何があったのかはわからないけど、きっとあの男が原因なんだろう。
 部屋に帰ると真っ暗だった。リビングに行くと真宮さんはいない。部屋に籠もってるんだろうか。ドアをノックしても返事は返ってこない。
「真宮さん、いる?」
 呼びかけても返事はない。部屋にもいないんだろうか。今どこにいるの? というメールをしても、返事は返ってこない。電話をしても出ない。どうしたものか。今は一人にしたほうがいいんだろうけど、でも放ってはおけない。勝手でお節介なのは解ってるけど。
 もう一度電話をするとドアの向こうから何かが投げられるような音がした。
「うるさいな! ほっといてよ!」
 真宮さんは部屋にいたらしい。酷く不機嫌だ。
「嫌だ。お節介なのは解ってるけど、構うからね」
 言ってオレはその場に座り込んだ。真宮さんからは見えないだろうけど、オレは放っておく気がないという意思表示だ。
 真宮さんは、うざいだのなんだのと罵声をドアの向こうから向けてくる。散々オレを罵っている間にだんだん涙声になって、泣き出した。
 女の子は解らない。感情の動きが激しい。
 真宮さんの泣く声を聞いているうちに、このドアを開けて抱きしめたくなる。でも、それは出来ない。このドアにはきっと鍵が掛かっている。もどかしいな。この向こうに真宮さんがいるのにね。
 ドアに背を預け、息を吐く。真宮さんはまだ泣いている。なんか、オレが泣かしたみたいだ。いや、そのほうがどれだけよかったんだろう。だってさ、それはオレが悪いじゃん。でも、今は違う。オレの知らない人が泣かせて。ぶん殴ってやりたいのに、ここにいないし。連絡先もしれないし。オレは何にも、出来ない。ただここで座ってることしか出来ないんだ。もどかしいな。
「出ておいでよ、真宮さん」
 そして話して大声で泣いて、ストレス発散して、お腹すいたらご飯食べて、お風呂は入って暖かくして寝ようよ。で、次の日は笑っててよ。あんな奴のこと忘れて、新しく恋してダブルデートなんてしちゃおうよ。あっ安心して。オレ、バイとノンケには興味ないから彼氏のこととったりしないよ。
 だからさ、出ておいでよ。

[ 11/16 ]

[*prev] [next#]
[戻る]
[しおりを挟む]
以下広告↓
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -