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 旅行の帰りにメールをチェックする。柊くんからメールが着てたら、大変だからね。
 うふふ、柊くんからメールが着てる。あれ? 空メだ。文字も送れないほど盛り上がってるのかしら。そんなことを思いつつも、私は一度部屋に帰ることにした。妙な胸騒ぎがする。杞憂なら、それでいい。こっそり部屋に入って盛り上がってるようだったら、ホテルに行こう。
 部屋に入るなり、何か聞こえた。盛り上がってるのかと思って部屋を出ようとしたが、靴が柊くんの分しかないのに気付く。柊くんだけなんだろうか。なら、どうして明かりが点いてないんだろう。暗闇に目がなれた私は、恐る恐るリビングに足を進めた。ソファーの陰から足が見える。さっと血が引いていくのがわかった。
「ひ、柊くん?」
 ビクリと倒れている体が震えた。
「あ、真宮さん……お帰り。ははっ。ソファーで寝てたら落ちちゃってさ。馬鹿だよねー。じゃあ、オレ部屋に戻るね」
 よろよろと立ち上がり、顔を隠すようにして部屋に行こうとする。声が震えてる。
「柊くん、ここに座んなさい」
 腕を掴んでソファーを指差す。
「いや、明日にしてよ。今日はもう眠い」
「悪いけど、見逃してあげれるほど、私そんなに優しくないのよ」
 強く言うと観念したように、柊くんはソファーに座った。顔を見られたくないのか、俯いている。この状況から考えて、多分痣だらけなんだろう。もしかしたら、血だらけかもしれない。そしてそれをやったのは、多分彼氏だ。
「顔、見せたくないならそれでいいけど、病院行く?」
 柊くんは首を振る。
「……じゃあ顔貸して」
 私が言うと柊くんはゆっくりと顔を上げた。思わず息を呑む。イケメンが台無しだった。救急箱を棚から引っ張り下ろし、暗い中手当てする。その間、互いに何もしゃべらなかった。
「ありがとう。……じゃあ、おやすみ」
 手当てが終わり、お礼を言って立ち上がろうとした柊くんをそのまま抱きしめた。ひっと小さな悲鳴が耳元で聞こえた気がするけど、気のせいだという事にする。小さく抵抗する柊くんを無視して、何度でも抱きしめると諦めたように大人しくなった。
 泣いている子供をあやす様に、背中を優しく叩く。空いた手で頭をそっと撫でる。しばらくして、小さく背中が震える。耳には、小さな嗚咽が聞こえる。私はそれに気付かないフリをして、背中を叩く手と頭を撫でる手を動かし続けた。

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