「・・・くしっ」
「ちょ、大丈夫?」
「ずび・・・のーぷろぐれむ・・・」
「・・・大丈夫じゃないね。鼻詰まってるでしょ」
冬も間近となった今日この頃。
暑い暑いと茹だっていた夏とは違い、寒い寒いとコートにマフラーの人が多くなり始めた季節。
暑さにも寒さにも弱い我が儘極まりない体の政宗は、絶賛風邪ひき中だった。
今も隣で歩きながら、何度もくしゃみを繰り返してる。
マフラーに隠れきってない高い鼻は、寒さにやられて真っ赤だ。
話す声は鼻声。
寒い所に出たせいで、鼻詰まりを起こしたらしい。
家に帰ったら、真っ先に炬燵の電源入れて、中に放り込んでやろう。
うん、それがいい。
「う〜・・・さみぃ・・・」
「お家もっちょいだから、我慢しよ?」
「う〜・・・も〜明日から学校やだ・・・」
風邪ひき政宗には、外を歩かなければならない登下校と、寒い教室での授業はきつかったらしい。
随分と疲れた顔してる。
本来なら綺麗にすっと伸びた背中が、寒さなのか疲れなのか、あるいは両方なのか、緩い曲線を描いている。
そんな政宗を見て俺は、何とか少しでも暖かくしてやれないかと考えた。
で、政宗のコートのポッケに手を突っ込んで、それでも冷たい細い手を、握った。
「ぅあっ!?と、突然何しやがる!?」
慌てて抜こうとする手を抑えるように、握った手に力を込めた。
「俺様手、暖かいから、あっためたげる」
「・・・いらねぇ。ぬけ」
「・・・何でそうやってすぐに人の良心を無下にするかな。俺様そんな子に育てた覚えないよ!」
「俺もお前に育てられた覚えはねぇ・・・くしっ」
「ほら、寒いんでしょ?あっためてあげるってば」
政宗に無理矢理引きはがされてポッケから追い出された手を、再び政宗のポッケに戻した。
今度は政宗は、何も言わなかった。
諦めたのかな、なんて考えてた俺には聞こえなかったけど
「・・・thanks////」
寒空の下。
小さな小さな言葉が、確かに紡がれていた。
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