何を言われようと離れない







授業中ケホケホと響く咳の音が、最近やけに多い。
秋から冬へと変わりはじめる今頃。
きっと、風邪っぴきが多いんだと思う。


「ケホケホっ・・・」


俺の斜め前に座っている恋人も、そんな風邪ひきさんの仲間だ。
毎日朝に蜜柑食べさせてるのになぁ・・・。
ホント、身体弱いんだから。

今朝だって、凄く怠そうだった。

『学校、休む?具合悪いんでしょ』

そう言っても、布団の中で怠そうにしていた彼はゆるゆると首を振り、風邪のせいで痛む喉で、小さな『行く』を紡いだのだ。

だからこうして来ているのだが・・・



休み時間、怠そうに机に突っ伏している政宗に近寄る。


「大丈夫?怠そうだよ・・・?」


声をかけると、掠れた小さな声で、『大丈夫だ・・・』と言われた
だけど、上げられた顔は大丈夫じゃなかった。

ほんのりと赤くなった、普段は青白いに近い白。
潤んだ目。
少し荒い呼吸。

呆れた。
こんな状態で・・・


「政宗」

「・・・な、に・・・?」

「正直に言って。辛いんでしょ?」

「・・・へいき、だ」

「平気じゃないでしょ?・・・ほら、やっぱり熱ある」


無防備なおでこに手を当てると、酷く熱い。
普段の平熱が低い政宗にしたら、辛いだろうに。


「・・・保健室、行こ?」

「・・・・・・・・・やだ」


ゆるく首を振り、政宗はまた怠そうに突っ伏する。
ホントに辛いのだろう。


「・・・何でそんなに嫌なのさ」

「・・・・・・・・・」

「ねぇ」

「・・・・・・・・・だって」

「何?」


またゆっくりと顔を上げて、政宗は小さな声で言った。


「だって・・・・・・保健室、行ったら、佐助そばにいてくれないだろ?授業、あるから帰されるだろ?教室に・・・」


そっか。
政宗は、それが嫌だったのか。
俺が傍に、いないことが。


「・・・政宗、やっぱり保健室行こう?俺、傍にいるから。センセにどんだけ怒られても、離れないから。だから、ね?」


怒られる事より、政宗が大事なんだよ。
政宗の身体の方が、ずっと大事。


だから

君が起きるまで傍にいるから、ね?





fin





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