早く目を開けて






※政宗殆ど出ないです




白いカーテンを開く。
そこからは優しい光が入ってきて、白いベッドに眠る政宗の白い肌を照らした。


「おはよう、政宗・・・」


眠ったままの政宗の黒髪を、そっと撫でる。
心拍数を知らせてくれるモニターは、昨日もその前も今も、変わらないリズムを刻んでいる。

もう、何ヶ月経ったのだろう。
政宗が、返事を返してくれなくなってから。



あの日は、得に特別な事もない普通の日だった。
同棲してる俺達は、朝、いつものように起きて、おはようって言い合って。
今日はお休みだから、一日一緒にいれるなって、政宗が笑って。
うん、って俺も笑って。


買い物に行ったんだ。
冷蔵庫が空だって気付いて。

で、二人で近くのスーパーで卵とお肉と野菜と・・・とにかく色々買って。
袋持って来るの忘れたって、俺が言ったら、準備のいい政宗が笑って、鞄から畳まれたビニール袋4つ出して。
それに物詰めて、2つずつ持って、家までの道を他愛ない話しながら歩いて・・・。


気付いたら、病院のベッドの上。
見上げた天井が、真っ白だった。
隣を見ても、当然政宗はいなくて。
起き上がると、身体に痛みが走った。

(あれ?俺、怪我なんてしてたっけ?)

覚えのない所に真っ白な包帯がぐるぐる巻かれてた。
何か息苦しいと思ったら、テレビとかでよく見る酸素マスクが付いてた。


入って来た看護婦さんが先生を呼んできて、診察を受けた。

そこで、聞かされた。
俺達は、居眠り運転してた乗用車に撥ねられたんだって。


政宗は重傷で、意識不明だって。


それから俺は順調に回復して、退院した。
だけど、政宗は目覚めないまま。

あの日。
ベッドの上の政宗を見た、あの瞬間から。
何一つ変わらずに、眠り続けてる。


「政宗・・・」


政宗・・・目を、開けて?

俺の中の蒼が、消えそうなんだ。
それはどんなに綺麗な青空でも、補充することはできない。

政宗の目。

その目の色だけなんだよ。
俺の中の蒼に、色を足してやれるのは。

だから、早く・・・。


祈るように、動かない手を握り締めた。




その時、変わらずに刻まれていたリズムが、変わった。




fin





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