草木も眠る丑三つ時。
俺は、甲斐に向かって北の地を走ってた。
旦那の命で北の偵察。
思ったより時間がかかった。
だから俺は今、まだ奥州にいる。
ここを統べる主の居城である米沢城付近の、鬱蒼とした林の中。
不気味だな・・・、なんて思いながら走っていると、そう遠くないと思われる場所から僅かな水音がした。
川が流れる音なんかじゃなく、何かが川の中を進む音・・・。
「こんな時間に・・・」
身投げか?
などと考えながら水音のした方に行くと、あまり大きくはないけれど、流れが急な川があった。
そしてその中を進む、着物を着たままの人の姿。
川岸には、その人の物であろう刀が一振り、置かれていた。
・・・武士か。
「ねぇ、別にアンタの勝手だけど、身投げなんて辞めた方がいいと思うよ」
男が身投げしても、川の神様は喜ばないから〜。
なんて事を言って、後悔。
俺様、忍らしくない・・・。
身投げしようとしてる男に声かけちゃうなんて・・・。
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