感情を消し、主の命に従う。
そんな、使い捨ての道具。
それが、俺達忍。
感情を持ってはならない。
私情での行動なんて、言語道断。
わかってた。
『人』として生きられない事くらい。
わかってた。
敵を殺さなければいけない事くらい。
わかってた。
『死』を恐れては、ならぬ事くらい・・・。
「わかってた・・・のに・・・」
冷たい地面に身体を横たえ、俺は呟く。
わかってたはず。
わかってたはず・・・なのに。
何故俺は・・・。
「何で・・・愛しちゃったんだろうね・・・?」
俺の身体を跨ぎ無言で刀を向けているのは、奥州の独眼竜、伊達政宗。
俺の・・・恋人。
「何で・・・アンタなんて・・・」
嫌いだった、はずなのに。
何で。
何時から。
愛しいと、思う様になったのか。
どうして、愛してしまったのか。
「お互いが・・・知らなかったから・・・じゃねぇか?」
知らなかった?
何を?
・・・そんなの、聞かなくたって知ってる。
「『愛情』を・・・?」
「ああ」
震えている、彼の声。
「そうかも・・・しれないね」
ねぇ
迷っちゃダメだよ。
きちんと殺さなきゃ。
俺は敵で。
君は頭なんだから。
皆を、引っ張っていかなきゃならないんだから。
「・・・早く、殺しなよ」
「・・・っ」
早く。
じゃないと、怖くなっちゃう。
・・・アンタと離れるのが。
「・・・ねぇ、じゃあさ、一個だけ約束しよう?」
「・・・what?」
「次に会うときはさ、絶対に、一緒に居よう?一緒に、生きよう?」
戦なんてない世界でさ。
一緒に、隣で。
生きて行こう?
「・・・ok」
小さく、頷いて。
そして。
「・・・しばらく、お別れだ」
この後に彼の左目から零れた滴を、俺は知らない。
fin
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