奇跡はきっと起きるよ









政宗が死んだ。


元々助からないのはわかってた。




病名は、転移性の肺ガン。





発見が遅く、もう転移してからで。
手遅れだったらしくて、手術は無理だって、言われてた。

抗がん剤の治療は、色んなのを試してみて、身体に合うやつをって事になった。
種類が違うのを何回もやってたけど、テレビとかでやってるような辛い副作用は、政宗にはあんまり出なくて。

だから、かもしれない。
あまりにも、元気そうな顔をしていたから。



「ああ、まだ大丈夫なんだな」



なんて、思ってしまってた。

その矢先だった。



政宗は死んだ。



何日か前から、痛みと戦い始めてた政宗。
背中、腰・・・色んなところが痛むらしく。
「痛い、痛い」と繰り返し、だけど其処を摩ってあげたら。


「楽ンなった・・・thank youな」


そう言って、笑った。



だけど、段々痛みは強くなってたらしくて。

最期の方は、酷い苦しみようだった。
普通の痛み止めじゃ効かなくなって、モルヒネの投与を薦められた。
俺も、それがいいと思った。

政宗が、楽になれるなら。

この痛みから解放されるなら、って。

だけど政宗は、痛みがホントに酷くなっても嫌がった。


「モルヒネは・・・嫌だ・・・」


そう言って拒み続けた政宗の顔は、今でも俺の目に焼き付いてる。

モルヒネは、麻薬。
投与すれば、痛みは無くなる。
だけど、同時に自分の意識もなくなる。

政宗は、それを嫌がった。
意識がなくなり、ただ楽に眠りながら逝く事を。
彼は、良しとはしなかった。


最期まで、生きたい。
生き続けたい。


きっと、そう思ってたんだと思う。

もう二度と戻って来られない、この世界を。
たった一つの眼に、焼き付けておきたかったんだと思う。



逝くまでの苦しみとは打って変わって、死に顔は凄く穏やかだった。
そっと閉じられていく瞼が、長い苦しみの終わりを告げた時。


「・・・頑張ったね」


俺は、彼の頭を撫でた。





「おはよ、政宗。そっちはどう?」


今日も俺は、何も返してはくれない写真に話し掛ける。



穏やかに笑う彼と、再び共に歩める

その『奇跡』を信じて・・・




fin





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