君が好き






燃えてる

何が?

燃えてる

教室が

燃えてる

君が





「佐助?」

炎と同じ色をした君が、言った。
外から聞こえるはずの運動部の声は、二重ガラスに遮られ、僅かにしか届かない。
その中でも、聞こえるか聞こえないかギリギリの君の声はきっと、呟き程の大きさだったのだろうと思う。

元々、あまりしゃべらない彼。
声なんて、殆ど聞く事は無い。

・・・いつも同じ教室に居るのに。



「何してんの?」

「消してる」

「落書き?」

「・・・あぁ」



一年の頃だった。
他の人とは少しだけ違う彼を、周りが疎みだしたのは。



『障害者は特別学級に行けよ』



ただ片方の目が見えないだけで、彼は疎外された。

眼帯で覆われた、右目。

それが理由。

だけど彼はそれでも、負けなかった。
泣かなかった。

強気な意志を宿した目で、睨み返してた。
負けるものか。
屈するものか。
ソレを体現したような目で。

俺は、その眼が好きだった。


「佐助は、何しに来たんだ?」


綺麗な隻眼が、俺を見ている。
不幸の象徴たるソレが、俺だけを映してる。

俺だけを。


「うん?ただ、人の気配がしたから。気になって来てみただけ」


こんな考え、おかしいだろうか?



「ねぇ、手伝ってあげようか?」



今君は、俺だけのもの・・・だなんて



fin





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