政宗は、虐められてた。
ずっと、ずっと。
「化け物!!学校来んなよ、お前!!!」
「ホント、邪魔なんだよ」
「見たくもねぇ!視界にいれたくねぇんだよ!!!目が腐る!!!!」
「同じ空気吸いたくねぇんだよっ!!!!」
そんな風に暴言吐かれて。
殴られて、蹴られて。
教科書捨てられたり。
靴に画鋲入れられて・・・。
言っているとキリがない位、政宗は沢山沢山、辛い目に遭ってきた。
教師だって同じ。
「無理、しなくていいんだよ?自分の気持ち、伝えてみようよ。
無理して全部溜め込まなくていいんだ。
お母さんやお父さんに相談したり、先生に言ったっていい。
誰かに頑張って話してみようよ」
おかしいよね。
無理しなくていい、って言ってるのに、最後は頑張れって。
おかしいよ、矛盾してる。
それに、その言葉が政宗を追い詰めてるんだ。
親?
政宗の親は、政宗の事なんて嫌いで嫌いでしょうがないんだ。
御飯だって作ってくれたことないって、政宗が前に言ってた。
先生?
傷つけてるあんたに、何を相談すればいいの?
結局政宗は・・・
ある時、政宗が公園にいた。
小さな公園。
夜の公園。
俺が独り暮らししてるアパートの近くの。
人っ子ひとりいないソコに、政宗はいた。
「・・・伊達ちゃん?何してるの?」
ビクって、肩が揺れたのがわかった。
それからそろそろ視線を上げて。
君は俺を見た。
眼は、キラキラ光りを反射してる。
家にも、学校にも居場所がない伊達ちゃんは、きっと此処で一人で泣いていたんだろう。
・・・人目を盗んで。
「猿・・・飛・・・?」
「うん。こんなとこにいたら、風邪ひいちゃうよ?うちにおいで」
そう言って細い細い腕を掴んだら、意外にも素直に政宗は付いてきた。
その日から、政宗は此処にいる。
政宗が家を出るって言った時にも、親は興味なさそうだった。
嗚呼、本当にどうでもいいんだ。
そう思ったのを覚えてる。
「ただいま、政宗」
バイトから帰ると、政宗は布団にもぐってる。
これは、いつもの事。
辛くて辛くて仕方ない時。
政宗はいつもこうして、布団にもぐる。
それが、殆ど毎日。
政宗はさ、言わばもう、飽和水溶液の状態なんだ。
辛さを溶かして溶かして溶かして・・・。
もう、溶けきらないんだ。
「・・・今日も、辛かったね」
「・・・ぅ」
「ほら、我慢しないの。泣いていいんだよ。
俺は泣いて欲しい。政宗の辛い事、全部言ってほしい。
泣いて、喚いて、叫んでいいんだよ」
『辛い』
『助けて』
そう、叫んで欲しい。
ホントの気持ち、言ってほしい。
「殺さないで?政宗の大事な気持ち。そのせいで政宗が痛いおもいするの、俺ヤダよ」
吐きだして?全部、全部。
俺に、ぶつけなよ。
『淋しい』って言ってよ。
「・・・ぅ、ぁ・・・」
俺に抱きついて。
政宗は、泣く。
だけどまだ声は上げてくれない。
それは、僅かに政宗の中に疑念が残ってる証拠。
いつか。
いつか、君に笑ってほしいな。
その時はきっと、
真っ暗な君の日常に
真っ白な光が差し込んで
真っ黒な君に
雨が降り注いで
真っ黒が全部、真っ白に変わる瞬間だと、俺は思うから
fin
- 67 -
[*前] | [次#]
ページ:
|