嫌い嫌いも好きのうち







『コイツ、嫌いだ』


そう感じたのは、直感だった。
二年に上がる時のクラス替え。
同じクラスになったあいつは、ヘラヘラと周りに愛想振り撒いて、よく回る口でしゃべってた。

派手なオレンジ頭。
謎の顔ペイント。
長い手脚。
整った顔。
いかにも軟派で、だけど女にモテそうな。
クラスの中でも中心に入れるだろうアイツと、俺は正反対だった。

なるべく一年の時、いや、それまでの学校生活と同じように。
目立たず、静かに。
そう過ごそうと思っていた俺に、奴は軽い調子で声をかけてきたのだ。

女子の視線が、こちらに向いてるのがわかる。
正確には、俺じゃなくてコイツに。
居心地が物凄く悪くて、俺は思わず話し掛けてきた空気の読めないオレンジ頭を睨んだ。
だけどコイツはおどけた調子で「ちょっと、怖いよ〜」なんて言ってて、ますますムカついた。

「おーい?」
「・・・話し掛けんな」
「えー。俺様話したい〜」
「うぜぇ、どっか行け」
「ねぇねぇ、話そうよー」
「・・・黙れ、邪魔だ、ウザい」

余り人と話すのは得意じゃない。
その上俺は、こういう軟派野郎が嫌いだ。
だから、出来れば関わりたくないのだ。

だが、奴は手強かった。
その日は俺にしつこくしつこく話し掛けてきた上に、次の日からもしつこくしつこく俺の周りをうろちょろするようになった。
いい加減痺れを切らして怒鳴った事もあったが、それは奴の思う壷だったのか、「やっとしゃべってくれた〜!!!」なんて喜んでた。
・・・ふざけんな。
俺はしゃべりたくないのによ。


そして今も、ちょこちょこ付き纏われてる訳だ。

「・・・・・・ねぇ〜」
「・・・・・・・・・」
「おーい」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・はぁ」
「・・・・・・・・・何でてめぇが溜息吐くんだよ。こっちのが溜息吐きてぇんだよ」
「だって、しゃべってくれない・・・」

昼休みの屋上で二人きり。
こんなに気まずい事があるだろうか?
俺は思わず奴に話し掛けてしまった。
なにやってんだ、俺。

「あのさ、俺のこと、嫌い?」
「嫌いだ」
「・・・・・・そんなきっぱり言わなくても・・・俺様泣いちゃう」
「泣け」
「・・・酷いなぁ、伊達ちゃんは。
あのね、伊達ちゃんは俺のこと嫌いだって言ったけど、さ。
俺は、伊達ちゃんのこと好きだよ」
「・・・・・・は?」
「だから、好き」

背中を預けていたフェンスから突然体を離し、奴は俺の目の前に立った。
そして腕を伸ばす。
カシャン、
フェンスが小さく鳴いた。
俺は逃げ場を奪われ、奴の顔を間近に見ている。
思わず目を逸らすと顎を掬われ、また目線を合わせられた。
整い過ぎた奴の顔に、ドキリと心臓が鳴った。
そのまま奴の顔が近づく。
唇に柔らかいものが触れ、すぐな離れていった。

「好きだよ。初めて見たときから。
どんだけ伊達ちゃんが俺を嫌ってても、ね。

・・・絶対、落とすから」

耳元で囁かれ、心臓がドキドキと大きく鳴った。
それに気づかれたくなくて。
俺は笑いながら言った。


「・・・・・・やってみろよ。
猿飛、佐助」


本当はこの瞬間に落ちていたのだろうけれど。
だけど、俺はお前が嫌いだから。
素直に「落ちた」なんて、言わねぇよ?
悔しかったら・・・言わせてみろよ、な?





fin





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