子供の時





あれは一体、いつの事だったか。
今日と同じ、クリスマスと呼ばれ、世間が浮かれ上がる日。
子供達はプレゼントが貰えると喜び、母親はいつにないご馳走を作る、冬のこの日。
あの日俺は、一人で家にいた。

「早く帰るから」

そう言って仕事に行った父から来た電話。
忙しそうな、声。

「ごめんな。仕事、長引きそうだ・・・」

申し訳なさそうに告げる父に、駄々をこねる訳にもいかず。

「ううん。大丈夫だよ。
・・・お仕事、頑張って」

ごめん、を何度も繰り返す父に、早くしないと他の人に迷惑になってしまうと告げ、電話を切った。


早く帰って来るって、言ったのに。
不思議とそうは思わなかった。
仕方ない。仕事だから。
僅かな寂しさと、他の子供への羨望を抱えながらも、諦めていた。
仕方ない。
自分は母親に嫌われた子供だから。
こんな俺と一緒にいるために、父さんは母さんと別々の家で暮らさなきゃならなくなったんだから。






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