暇人国主






「よぉ、政宗!!」

「元親・・・また来たのかよ。
テメェ、本当暇だな」

同盟から半年。
コイツは何故か一週間に一回の頻度で、奥州に来ている。
仮にも一国の主であるなら、コイツにも政務はあるハズ。
大丈夫なのだろうか、四国は。

「どっか行かねぇか?」

「テメェは暇かもしれねぇが、俺は仕事中だ。
行きたきゃテメェ一人で行け」

俺は今、仕事中なのだ。
終わらせないと、また小十郎の小言を聞かされる事になる。

「・・・後どんぐらいで終わる?」

「I don't know」

「???」

「知らねぇっつてんだよ!!」

俺が訳して言うと、元親は納得したように頷き、その後ため息を吐く。

「お前ぇ、その南蛮語どうにかしねぇ?」

「an?これはどうにもなんねぇし、する気もねぇ」

どうにかしろ、とか言う前に、テメェが覚えろ。
でも、こうやって困らせるのが楽しい。
元親には秘密だが。

「なぁ、政宗・・・」

「何だ?」

政務を片付けながら、元親の相手をする。
これも、いつもの事。
いつもどこかに行こう、と誘って来る割に、元親は俺が仕事し終わるのを待っている。
今日もそうだった。

「Finish・・・」

「お、終わったのか?」

「ああ、小十郎〜!」

「終わったのですか?」

「Yes、元親連れて外出ていいよな?」

小十郎は、一枚一枚確認し、頷いた。

「じゃ、行くか」

「おおっ!!」

元親は、目を輝かせた。





「っつうか、何でいつも待ってんだ?行きてぇなら一人でも大丈夫だろ、こんだけ来てんだから・・・」

いつも元親と来るのは、城から少し離れた林の中。
目の前には湖があり、俺がガキの頃から気に入って、よく来ている場所。

「何でって?そりゃ・・・」

心無しか、元親の顔が赤い・・・。

「何だよ・・・」

「お前と・・・政宗と二人でいたいからだよ・・・///」

は?
俺と・・・?
二人でいたい??

意味わかんねぇ・・・。
大体あの部屋でも二人だったじゃねぇか。
訳わか・・・

「部屋じゃ、駄目なんだよ・・・」

「部屋じゃ、駄目?何でだ?」

「あそこは、いつ人が来るかわかんねぇし、襖一枚隔てた先にはいっぱい人がいんだろ?だから駄目なんだ」

何が言いたいのだろう・・・?

俺が元親を見ると、顔を真っ赤にした元親に、突然抱きしめられた。

「!?」

余りに突然過ぎて、抵抗出来なかった。

「政宗・・・俺はお前が好きだ」





・・・は?
これは・・・。
「告白」というやつだろうか?

でも、俺は男で、コイツも男で・・・。
つまりは男同士という訳で・・・。
駄目だ。
頭が混乱してきた。

「元親・・・俺は男だ」

「わかってる」

大きく頷く元親。
・・・わかってんのか?ホントに。
コイツ、同性愛者だったりすんのか?
そんな俺の視線に気付いた元親が、慌てて首を振った。

「べ、別に俺は男が好きとかって訳じゃねぇからなっ!!!」

「お前だから好きなんだ」

言って元親は腕に力を込めた。

いつもなら。
振り払って笑ったと思う。
いつもなら。
嫌だという気持ちがあったと思う。

これが何て言う気持ちかは、俺はまだわかんないけど。
一つ、今気付いたのは。

お前の腕の中は、小十郎と同じか、それ以上に
安心するって事。




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