毎年の事だ。
自分の誕生日に、わざとバイトを入れるのは。
誕生日なんて、いい思い出は何一つない。
毎年毎年、一人寂しく迎えるこの日。
誰にも何も言われない。
いつも通りの日常が過ぎる。
何時しか、誰にも、何も期待しなくなった。
だけど、この日を意識すると、辛い過去だけが頭を過ぎるから。
だから、意識しないように、わざと毎年バイトを入れた。
付き合い始めて半年の恋人。
コイツはよく俺の家に泊まる。
もう、半同棲状態だ。
今日朝起きたら、コイツ、佐助は笑って言った。
「おはよ。・・・誕生日、おめでとう」
覚えていてくれた。
それだけで、十分。
今までは、「おめでとう」すら言って貰えた事は無かったから。
今日のバイト、やっぱ休みにすればよかったかな。
出てくる前に見た佐助の焦った顔を思い出して、そう思った。
こんなのは、初めてだった。
- 39 -
[*前] | [次#]
ページ: