ザバッ・・・
気付いたら俺は、自分も川に入ってて。
彼の身体を、抱きしめてた。
いつからいたのか。
腰まで浸かってしまう水によって体温を奪われた身体は、すっかり冷たくなっていた。
いつもは固い甲冑に包まれている身体は意外と華奢で、頼りない。
それを力強く抱きしめて、手甲の爪で傷付けないようにしながら、彼の背中を撫でた。
「アンタは、一人じゃないよ・・・」
耳元で囁いてやると、ビクリと大きく揺れる身体。
少しだけ、聞いたことがあったんだ。
彼が母親に疎まれてたこと。
右目の旦那に会うまで、ずっと一人だったこと・・・。
今でも時折思い出してしまうくらい、その傷は深かったんだろう。
きっと、それだけ。
だけどこの腕の中の人物には、それがわからなかった。
だからこうやって戸惑って、川に入るなんて、奇怪なことして・・・。
この人には、わからなかったんだ。
とっても単純な、『寂しい』って感覚が。
「一人じゃない。もう誰も、アンタを虐げたりしないんだよ」
そうやって、囁き続けた。
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