アンタはもう








ザバッ・・・


気付いたら俺は、自分も川に入ってて。
彼の身体を、抱きしめてた。

いつからいたのか。
腰まで浸かってしまう水によって体温を奪われた身体は、すっかり冷たくなっていた。

いつもは固い甲冑に包まれている身体は意外と華奢で、頼りない。
それを力強く抱きしめて、手甲の爪で傷付けないようにしながら、彼の背中を撫でた。


「アンタは、一人じゃないよ・・・」


耳元で囁いてやると、ビクリと大きく揺れる身体。

少しだけ、聞いたことがあったんだ。
彼が母親に疎まれてたこと。
右目の旦那に会うまで、ずっと一人だったこと・・・。

今でも時折思い出してしまうくらい、その傷は深かったんだろう。

きっと、それだけ。

だけどこの腕の中の人物には、それがわからなかった。
だからこうやって戸惑って、川に入るなんて、奇怪なことして・・・。

この人には、わからなかったんだ。
とっても単純な、『寂しい』って感覚が。


「一人じゃない。もう誰も、アンタを虐げたりしないんだよ」


そうやって、囁き続けた。





- 47 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -