「・・・身投げじゃねぇし」
暫くの沈黙の後、ボソッと男が言った。
・・・ちょっと待って。
この声・・・
「り、竜の旦那・・・?」
間違いなく答えた声は、うちの旦那の好敵手であり、此処を統べる筆頭、伊達政宗の声。
・・・呆れた。
「わざわざ城抜け出して、なんでこんな時間にこんなとこで水浴びしてる訳っ!?」
夏だよ?確かに。
夏ですよ。
でも今日なんてそんな熱帯夜じゃないし!!!
彼を見て、息を飲む。
だってさ。
いつもの覇気が嘘みたいな弱々しい目して、こっち見てんだもん。
「・・・なんか、落ち着かねぇんだ。
寝ようって思っても寝れねぇし、なんかモヤモヤするし、小十郎が部屋出てくのが嫌だとか思ったり・・・。訳、わかんねぇ・・・」
そう言って俯いてしまった彼が、驚く程小さく見えた。
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