「うわ〜俺様もビシャビシャ・・・」
いくら傘を差していても、大雨の中に何時間も居たのだ。
当然、びしょびしょの濡れ鼠。
取りあえず玄関先で気持ち悪く張り付く靴と靴下、それに上着を脱いで、洗面所にタオルを取りに行く。
政宗は一先ず玄関待機だ。
入って来られたら、たまったもんじゃない。
「政宗〜上着脱いで、コレで髪と身体拭いてて。今着替え持ってくるから」
コクリと頷く彼を見て、俺は急いでタンスの中から彼のスウェットを引っ張り出す。
(あ〜・・・下着もいってる・・・よね)
あれだけ長時間居たんだから・・・そうだよね・・・。
「はい、着替えて上がっといで」
玄関に居る政宗に下着とスウェットを届け、俺も着替える。
(あ、お風呂沸かさないと・・・。今日は水入れっぱの日で良かった)
ボイラーのスイッチ入れて部屋に戻ると、政宗が毛布にくるまって床に居た。
「寒い?」
「・・・寒ぃ」
「あんな雨の中にずーっと居るからでしょ?」
「・・・ごめん」
しゅん、となっちゃった彼を、毛布の上から抱きしめた。
「言いたい事は、言っていいんだよ。辛いことあったら、泣いていいんだよ。
だから、我慢・・・しないで?」
「・・・わかった」
あれだけ酷かった雨の音が、いつの間にか止んでいた。
涙を流しても、誰も居てはくれなかった。
だから彼は、泣かなくなった。
けど今は、俺が居る。
ねぇ、神様
彼に涙を、返して下さい
俺の恋人に、どうか
fin
- 54 -
[*前] | [次#]
ページ:
|