まだ家には入らないでください






「うわ〜俺様もビシャビシャ・・・」

いくら傘を差していても、大雨の中に何時間も居たのだ。
当然、びしょびしょの濡れ鼠。
取りあえず玄関先で気持ち悪く張り付く靴と靴下、それに上着を脱いで、洗面所にタオルを取りに行く。

政宗は一先ず玄関待機だ。
入って来られたら、たまったもんじゃない。

「政宗〜上着脱いで、コレで髪と身体拭いてて。今着替え持ってくるから」

コクリと頷く彼を見て、俺は急いでタンスの中から彼のスウェットを引っ張り出す。

(あ〜・・・下着もいってる・・・よね)

あれだけ長時間居たんだから・・・そうだよね・・・。

「はい、着替えて上がっといで」

玄関に居る政宗に下着とスウェットを届け、俺も着替える。

(あ、お風呂沸かさないと・・・。今日は水入れっぱの日で良かった)

ボイラーのスイッチ入れて部屋に戻ると、政宗が毛布にくるまって床に居た。


「寒い?」

「・・・寒ぃ」

「あんな雨の中にずーっと居るからでしょ?」

「・・・ごめん」

しゅん、となっちゃった彼を、毛布の上から抱きしめた。


「言いたい事は、言っていいんだよ。辛いことあったら、泣いていいんだよ。
だから、我慢・・・しないで?」

「・・・わかった」

あれだけ酷かった雨の音が、いつの間にか止んでいた。


涙を流しても、誰も居てはくれなかった。
だから彼は、泣かなくなった。
けど今は、俺が居る。




ねぇ、神様

彼に涙を、返して下さい

俺の恋人に、どうか



fin





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