「ん・・・っ、こじゅ・・・ろ・・・?」
目を覚まし、周りを見回す政宗の目は、頼りなく揺れている。
「目を覚まされましたか、政宗様」
声をかけると、安心したようにホッと息をついた。
やはり一人になるのが嫌なのだろう。
その手は、小十郎の羽織りの裾を掴んでいる。
まるで、何処にも行くな、と訴えているかのように。
「大丈夫ですか?」
問うと、小さく頷いた。
その目はまだぼーっとしている。
額の手ぬぐいを変えると、気持ち良さそうに目を閉じた。
「ゆっくりお休み下さい・・・政宗様」
言って頭を撫でると、小さな声で政宗が
「何処にも行くなよ・・・?」
と呟いた。
「わかっておりますよ。
だから、さあ、お休み下さい」
「んっ・・・絶対だからな・・・」
そう言うと、政宗は眠りについた。
お前だけなんだ・・・。
俺には、大切な部下は沢山いる。
でも。
俺に愛情ってもんを教えてくれたのは、お前だけだ。
母上も、他の奴も教えてはくれなかった・・・。
あの時。
ずっとお前が側にいてくれたこと、今でも覚えてる。
熱で呼吸が苦しくて、頭もぼーっとして、辛かった。
一人で目ぇ覚めた時、すげぇ寂しくなって。
泣きそうになった。
でも、すぐにお前が戻ってきてくれて、安心した。
俺がふさぎ込んだ時も。
お前が無理矢理医者んとこ連れてって、見えなくなった右目、えぐり取りやがった。
その日から、お前は俺の右目になった。
俺の身体の半分になった。
俺にとって、お前ってスゲー大事な奴なんだ。
だから、俺から離れないでくれ・・・。
また、一人になるのは嫌だから。
お前がいてくれるから、俺は生きていられるから・・・。
fin
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