気付いた時には何もない






「だって、」

「ん?」

「大事にしてても、いつかはみんな壊れちまう。
だけど、こうやって壊しとけば、“いつか”はもう、来ないだろ?」


そう言って、彼は笑った。
凄く、幸せそうに。



今日も、何かが壊れて行く音がする。

お隣さんは、壊し続ける。

必死に繋ぎとめようとして。
大切だから、壊し続ける。


「馬鹿みたい」


壊さなくたって、繋ぎとめられるだろうに。

だけど俺はこの音を、止めたりはしない。
狂った隣人の、狂った宴を、止めたりはしない。

壊せばいい。
壊して壊して、いつか気付く。

もうその時、貴方には何も残っては居ないのだろうけれど。



fin





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