引き上げ作業






「もうやめたら?いい加減」

気付いたら、身体が動いてた。
暴力が一時的に止んだ。
俺はそのまま君に近づいて。

「行こう?伊達ちゃん」

殴られて、蹴られて。
抵抗、することも無く。
ただ、奴らの好きにさせてた君。
暴力が止んでも、ぐったりと教室の冷たい床に横たわってた君を立たせて。
俺は君の手を引いて、教室を出た。

君は何も言わない。
何も言わずに、俺についてくる。
ずっと・・・下を向いて。
世界のすべてを、拒絶して。
そんな君が、悲しい。
ねぇ、前を向いてごらんよ。

お水の底から、上がっておいで?



俺達はそのまま、屋上に上がった。
フェンスの傍で君の手を離すと、君はその場に座った。

「・・・」

君は、何も言わない。
広い広い屋上で
冷たい沈黙が、俺達を包んだ。

「ねぇ」

俺が口を開いても、君はこっちを見てはくれない。
それでも、俺は続けた。
・・・ちゃんと、君に聞こえてる事を祈りながら。

「上がっておいで?伊達ちゃん」

この言葉の意味、君ならわかるよね?

「冷たいお水の中にいつまでもいたら、ホントに死んじゃうよ?
ずっとお水の底に居ないでさ、上がっておいでよ」

「・・・」

何も答えない、君。
だけど、顔、上げてくれた。
俺は君と視線が合うように、かがむ。

「おいで」

そう言って、サラサラで綺麗な黒髪を撫でた。

「冷たいでしょ?ソコ・・・」

「・・・ゃ」

小さな、小さな拒絶。

「何で、嫌なの?ソコじゃないと、自分を守れないから?」

ビクッって、肩がはねた。

弱々しい瞳から、涙が一筋。

「泣かないの。大丈夫。大丈夫だから。安心して出ておいで?俺の傍に・・・居て?」

君が好き。

気付いたのは、君が水底に入ってしまった後。
今まで。
今日まで。
ずっと目を逸らしてきた。

だけど、もう。
もう、逃げない。

君と一緒に戦うよ。

だから、上がってきて?その冷たい水の底から。

そして・・・

俺の傍に居て?
俺が君を、温めてあげるから。



fin


あとがき

はい、意味がわかりませんww
なんかとにかく、精神的に崩壊寸前で、外界から自分を遮断しようとしてる政宗と、好きなんだけど助けられなかった佐助が書きたかった・・・(^_^;)
とにかく、此処まで読んでくださりありがとうございましたっ!!

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