窓側の席の一番後ろ。
そこにいつも、君はいる。
数ヶ月前に突然やってきた君。
「伊達です。よろしく」
簡単なあいさつ。
その時に見た前髪で隠れてない左目が、鋭くて。
勝気で負けず嫌いな奴だって、一目でわかったよ。
だけど、それから数週間後。
君の鋭い左目は、揺れてた。
ゆらゆら、ゆらゆら
まるで、水面に映った月みたいに。
暗くて深い闇の中に
揺れる、消えそうな光が、たった一つ。
不思議なくらい白い肌は、見るも無残な状態。
いくつもの青とか、赤とか、緑とかの痣が浮かんでる。
ほら、今だって。
大人しく自分の席に座って、窓の外眺めてただけなのに。
それなのに君は、変な言いがかり付けられて。
汚い下衆野郎達に殴られて、蹴られてる。
それでも君は、悲鳴も上げなければ、呻きもしない。
声なんて、少しも出さない。
揺れた瞳で虚空を見つめて。
ただ、暴力が止むのを待ってる。
冷たい、水底で。
暗くて、寒い。
光の届かない水の底で。
心を、閉ざして。
外の世界から自分を隔離して。
たった・・・独りで。
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