黄瀬誕 | ナノ




00:はじまり







 あの日、偶然通りかかった体育館横。まるで何かに動かされたように綺麗に俺の頭へと直撃したバスケットボール。

 色白、と形容されることが多い自分とは正反対の褐色の肌、強い意志を秘めた瞳。深い深い海の色をしたその宝玉。

 思えば、あの時すでに俺は彼のことが好きになっていたのかもしれない。






 * * * *




 はぁ。なんの着信も受けない携帯を見つめて、ため息を吐く。遠く海を渡り、夢通りアメリカのプロリーグで活躍する彼、青峰が今日がなんの日か覚えているかすら怪しいのだ。日付が変わる瞬間丁度の連絡なんて、期待する方が馬鹿げてる。こっちと向こうとでは時間差もあるし、とは思うのに。

 やっぱり、待ってしまう。彼からの連絡を。

 仕事用の携帯は多分これからうるさいくらいに震えるのだろう。この握りしめているプライベート用の方にも、高校の時の先輩や青峰っち以外のキセキからのメールで震えはするはず。

 それを嬉しく無いとは言わない。寧ろ涙が零れるくらいに嬉しい。自分の事を祝ってくれる人がいるってのは本当に幸せな事だと実感するから。

 でも、一番は違う。

 やっぱり、青峰からの連絡は欲しい。お互い忙しい合間を縫って、週一で通話はするけれどシーズンに入ってしまうと半年近く生では会えないのだ。プレゼントは他に何もいらないから、会いに来てと頼んだら彼はどうするだろう?

 そこまで考えて、時計が0:13を差していることに気づいた。プライベート用の方をチェックする。

 赤司っちに紫原っち、緑間っちに高尾くん、黒子っち、笠松先輩、森山先輩、小堀先輩etc…


 ーやっぱり、青峰っちからは来ていなかった。




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