世界中の誰よりも






息を切らして慣れ親しんではいるけれどこうして訪れるのは久々な路地を走り抜ける。

もう少しだ。

もう少しで、彼に会える。

そう思えば自然に笑みがこぼれて、スピードを更に上げた。



* * *



青峰っちの誕生日を祝うのは何もこれが初めてじゃない。全国大会も終わり、秋季へと気持ちを切り替えるこの時期。中学の頃は部室で、キセキのみんなとサプライズをした。

彼は驚いていたけれどすぐに笑って照れくさそうに礼を言っていたのを鮮明に覚えている。

─けれども去年はそれどころじゃなかった。中3の彼は人を寄せ付け無かったから、何もなかったんだ。

だから、実質的には二回目。

二人きりで過ごそうとするのは、はじめて。

ああ、彼はドアを開けたとき、どんな表情を見せてくれるんだろう。



* * *



青峰っちの家の前についた。青峰っちの部屋はまだ電気が付いている。

良かった、起きてた。

ほっと安堵してスマホを見るとまだ少し時間がある。

どうしようか。

そう思っていれば不意にメールの受信を知らせる振動。開ければ赤司からのものだった。

内容は、明日について。段取りから何から結構な長文。

それに返事を返すとそろそろ時間も近づいてきて。

8月30日23:57、青峰っちにメールをする。

ガチャ、目の前のドアが開き中からなんでこんな所にいるんだ、と雄弁に顔で語る彼。

抱きつきたいのをぐっと堪え、彼の部屋まで我慢する。



パタン。背後の扉を閉めて、目の前の未だ状況が理解出来ていない彼に飛びついた。

ぎゅっと抱きしめてくれる彼の腕はとても優しい。

そして時計を目線だけ動かして見れば後15秒。


10。

5。

3、2、1…


「誕生日おめでとう、青峰っち」


この世界で一番最初に彼を祝福した。






界中の誰よりも
番にあなたを祝福したくて。

(生まれてきてくれてありがとう、青峰っち!)






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