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宣戦布告だけは意気揚々と。決して勝てやしないのに、何度も何度も挑んでくる。
そういったところは本当に中学の頃から変わらない、と青峰は一人で笑った。
「何余裕かましてんスかー」
目ざとく見つけてそう拗ねる所も。
* * *
コイツがいたのは本当に助かった、と柄にもなく過去を振り返ってみればそう思う。
おそらく、黄瀬がいなければもう少し早くバスケから離れていたんじゃねぇか。
高校に入って、バスケをやっていたのはいつかのテツの言葉と、疎遠になる前の黄瀬の泣き顔が瞼の裏に焼き付いていたからで。
『なんで、なんで!!そんなに才能を持ってんのに辞めんの、勿体無いッスよ!持て余してんなら俺にくれ!!!!』
何時もの口調も崩れて、涙を目尻に溜めながら叫ぶその映像は繰り返され、心を掻き乱す。
そして、どこかで期待していた。
彼を見込んだ自分だからこそ、こうしてまともに練習をしなくなった俺をいつか試合で負かすのはアイツなんじゃないかって。
力を持て余ます他のキセキより、誰よりも向上心があった。
"俺を倒す"
その目標にひたむきだったから。
だから、インハイでの試合。完全無欠の模倣を使って俺の模倣を黄瀬がしたとき、久々に心が踊った。
これほどまでに上り詰めたか、と。
それでも俺の方が上だったのは多分時間によるものだろう。
あれが冬なら。結果はきっと変わっていた。
* * *
回想を終わり、右手のボールに集中する。タッ、地面を蹴りゴールへとぶち込めばどうしても笑える。
後ろでコートに倒れ込んでいる黄瀬の方へと向かえば、黄瀬が視線だけこちらに寄越した。
それを見て口の動きだけで感謝を伝えると、怪訝そうな顔で起き上がられた。
「うぉっ!!」
「え、青峰っち今何て言ったの!?ちょっと」
「あーもーうるせぇ!」
照れが今更ながらにやってきて逃げ出そうとするが、黄瀬は追いすがる。
…それで動けなくなるのは俺も大概コイツに惚れてるな、なんて思った事は自分だけが知っていればいい。
ひとりよがりの青と その隣に並んだ黄
(アンタがいるから俺がいて
)(お前がいたから今俺は此処にいられる
)
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