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言っちゃあれだけどあの日、あのときまで、俺はこの世にいる意味が分かんなかったんだと思う。 家庭環境がダメだったとか、そんなことは全くなくて家族は寧ろ好きだった。 それなのにこの世はどう仕様もなく嫌いで。 いつもどうしたら逃げられるかとか、消えられるかとか。そんな事ばっかり考えてたんだと思う。 多分、生まれ持った才能が少し厄介だったから。 見たものすべてが出きるようになって。楽しかった遊びも、上手い人を真似したら勝ち続けたりとかしちゃって。ゲームも、すぐにクリアできて。 なんの不自由も無い。逆にそれが子ども心には怖くて、空虚なものに感じたんだ。 周りがやる何か。それは数日経てばすぐにマスターしたし、趣味とか好きなものとか言われても答えられない。だってある一線を越えてしまえば、面白く無くなる。 ─モデルも、そんな世界を壊してくれるかな、なんて淡い期待を持ちながら始めた。 結果は他と同じ。 何も俺を楽しませてくれない。 心を引き留めさせてくれない。 そんなある日、頭にぶち当たったバスケットボール。それが、俺を変えた。 謝ってきたのは、平均身長以上の俺より更に高い色黒な選手。 『モデルの黄瀬くんじゃん』 そんなことを言われたけれど、俺は彼を知らなかった。 後に百人近くいる帝光中バスケットボール部のエースだと知って、何故だか分からないけどもっと知りたくなったんだ。 んで、それから何日も経たない内に体育館に見学しに行った。 キュ、キュッ。コートをバッシュが滑る音。 ダンッ。床を蹴り上げて跳躍する彼。 ガシャッ。ゴールにボールをぶち込んで、ダンクが決まった瞬間。 …これしかないと思った。 今までのとは質が全く違う。何日見たって真似できやしない、絶対的なプレーとプレイヤー。 モノクロの世界に、色を付けたのは紛れもなくあの日の貴方でした。 あなただけが
全ての
世界。