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ふわり。
純白の裾を翻し、彼女は振り返った。
「─っ」
絶句。
今まで散々目の前の彼女を愛しいとは思いはしたが、その全てを足しても比べものにならんほどや。
まさか、これほどまでとはな。
「…なんだよ」
ずっと黙っとるワシを見て、彼女…幸は眉間に皺を寄せた。
あぁ、せっかく可愛いのに台無しやん。
「いや、めっちゃ似合うとる」
まだいくらか呆けながら答えた。
アカン、これ色々っアカンのちゃう。
そうか、と寄せていた眉を戻し淡く微笑んだ幸に軽く理性は焼き切れそうだ。
待て、落ち着けワシ。こんなん青峰に笑われるレベルやぞ。
高校時代の野生の獣のような後輩を思い出し、なんとか自制すると袖を引かれた。
「ん?」
瞳を覗き込めばかすかに頬を赤らめながら、今吉と小さく呼ばれた。
瞬間、彼女の唇に人差し指を押し当て少しの間黙らせる。
「今日からお前も今吉やろ?」
そう笑えばハッとした様子で悪ィ、と謝る彼女はやはり地球上で一番愛おしい。
「翔一」
そして付き合ってからも片手ほどしか呼ばれた事のない名前で呼ばれ、今度こそ
「なんや」
と返した。
「お前と一緒になれて、本当に嬉しい。ありがとう」
……アカンわー、この嫁さん最強。可愛すぎる。
「それはこっちのセリフや。これからも、よろしゅうな」
呟いて、額に口づけると今日から始まる新しい日々に思いを馳せた。
貴方がいて私がいてそこから幸せは始まる。