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「黄瀬っ!!」
そう叫ぶ声が聞こえた。けれど彼に合わせる顔なんて無い。だから振り返る事無く走り出した。
* * *
息を切らし、辿り着いたのは帝光中からさほど離れていない一つの古びた神社。
苔むした社のそばに腰を下ろし、なんとか落ち着こうと上を見上げれば雨が降り出していて。
「あー、今日はホントにツイてないっスね……」
思わずそう呟いた。
まぁ、天気は知らないとしてそのほかの原因は私にあるのだけれど。
苦笑して、身を縮める。─寒い。いつの間にか息が白くなっていた。12月も半ばを過ぎた雨は、なんの慈悲もなく冷たく降り注ぐのみ。
寒い、冷たい…隣にいつもいてくれたアンタがいない。
そう考えが行き着けば、泣きそうになった。
こうなるのは予想できた?
やっぱり、私は彼には釣り合わない?
答えはでなくて、寒さに震える体を抱き締める。空を眺める事すら面倒になった。ならば、としゃがみ込むと涙がひとつ、頬を伝った。
好きだよ。
大好き。
嫌いになれる訳ないじゃん。
去年のあの日から私の心はアンタに捕らわれたまんま、他に目移りするなんて有り得ないんだから。
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