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荒くなっていく息と時たまもつれそうになる足。
もうすぐ、この体は私言うことを聞いてくれなくなる。
そんな思いさえ浮かんでくるようだ。
灰がかったくすんだ色をした空は、既に私を見捨てたようだった。
* * *
今日は校内駅伝だった。
この日のために保体で何度も走らされたと言う忌々しい日。
部活も運動部だし、体力が無いと言うことも格段足が遅いといったわけでもない。
むしろクラスや平均を見れば充分早い方に入る。
けれどだからと言って長距離が好きなわけでは無いのだ。
一体何が好きでこんな道のりを走り続けなければならないのかと考え始めたりするほどに。
─しかし今年は手を抜くわけにはいかないのだ。
赤司っちからは
『2キロをそうだな…9分以内だ』
と陸上部顔負けのノルマを出されているし、何よりも私を駆り立てているのは…私の次の走者にあった。
私は女子のラスト、第五区。
そしてアンカーを務める第六区走者は……青峰っち。
それが決まった時、彼が私に
「一位でかえって来いよ」
と挑戦的に笑うから、
「当たり前ッス!!」
なんて啖呵を切ってしまった。
元来の性質が負けず嫌いなのと、憧れの彼に少しでも近づきたかったから。
* * *
あん時は当日の体調までは慮っていなかった、なんて今更公開しても遅い。
ゾクゾクと背中を這いずる寒気に段々と増す頭痛。
しかもこの秋空、先ほどから雨をこぼし始めた。
走り始めておよそ3分、折り返し地点を遠目に確認したところ。
六位で回って来た襷を、彼との約束…と言えるかは疑問だが…のため三位にまでこじつけた。
あと、2人。
震えるからだに背を向けて、ただひたすらに歩を進める。
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