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「じゅーんっ」

「…なんだよ」


今日はシュートが全然入らなかった。フィギュアの犠牲もだか、それ以上に私の心にのしかかるのはキャプテンとしてこれでいいのか、と言う自問自答だった。

やっぱり私は相応しく無いから、伊月や木吉がやった方が良いんじゃないかって。

そんな帰り道、後ろから投げかけられた自分を呼ぶ声。

振り向けば笑顔で手を振る木吉。

さっきまで考えていた事のせいもあってか、ツキン、胸に何かが刺さるような痛みが走った。

…それでもそれを悟らせるわけにはいかないから数秒の後、極めて平静を装っていつも通りに返す。

「ほら」

瞬間、何かをポイッと投げられて落とすわけにもいかず反射的に受け取る。

その間に木吉は私の横に来ていて、普段以上に優しく温かい笑みを浮かべると

「あんまり無理はしすぎるな」

そういって頭を撫でた。

バスケットボールもを掴んでしまう大きな手に撫でられると、よく分からないけど涙が出そうになった。

恐らくこの横のド天然でも時々鋭すぎる勘を持つ男はそれに気付いていたのだろう。

じゃあ、と去ろうとするその制服の袖口。そこを小さく引いて、

「まだいて」

呟けば、

「分かった」

と言われた。




その優しさに甘えてしまうのは私のエゴです。

自覚症状はあるので今だけは、側にいて。




(どうかどうか今だけは)










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