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めったに人が来ないと言うことで有名な帝光中学別棟の実技科教室連。

告白スポットとしても名の知れたこの場所に、どうしたって似合わない2人。

…いや、片方はサボリと嘯かれてしまえば納得せざるを言えないのだけれど。

褐色の肌に青黒い髪を持った男がバスケ部のエース、青峰大輝。

その向かいになにやら思い詰めたような顔で立つのは、同じくバスケ部で金糸のような髪を持ち、学生の合間モデルをするほどに顔立ちの整った黄瀬涼太。

しばし無言で立ち竦む2人。静寂が辺りを包む。

─先に口を開いたのは、青峰のほうだった。

「どうしたんだよ、黄瀬ェ」

もう帰りてぇんだけど。
そう続けた彼にビクリと震える肩。

申し訳無さそうに眉を下げて、今にも涙を溢れさせそうな黄瀬はそれでも何とか言葉を紡ごうとしたけれど。

「ごめんなさい…ごめんなさいッス、青峰っち………」


出てきたのは謝罪だけ。更に眉間に皺を寄せて、怪訝そうに自分を見る青峰に、黄瀬の涙腺は耐える事を諦めた。

ポロポロポロポロ、まるで真珠の様に零れ落ちる雫。無駄といってはなんだが、綺麗な顔なだけあってその様子がまた絵になる。
そうでは無いと知っているのに、これは自分のせいだという罪悪感に襲われて、青峰のその褐色の長く少し骨ばった指は、黄瀬の頬を滑り落ちる涙を拭っていた。

「─泣くなよ」

自分でも驚くほどの柔らかい声。

それに顔を歪ませ、更に泣き募る彼にもうどうしていいか分からなくなって。

訳も理由も、何も分からず考えられず。
ただそうしたいという衝動に従い、震える黄瀬を己の腕の中に封じ込めた。

肩に彼の顔を優しく押し付け、もう一度静かに泣くな、と今度は懇願した。

すると、

「もう、ほんと…なんなんスか」

涙に濡れた声が微かに聞こえて。それを言いたいのはこっちだと、そう続けようとした言葉は先程のとは相反して、やたらはっきりした彼の声音に掻き消された。

「優しくしないで」

俺に、これ以上優しくしないでくださいッス。

─いつ、誰が。お前に優しくした。

疑問しか浮かばなくてその次を待つと、

「嫌って言いながらも俺の1on1いっつも付き合ってくれるし、練習試合とかでノルマクリアしたら凄く褒めてくれたり……」

マジか。

ヤバイ、完璧に無意識だった。口元を押さえ、軽く赤く染まった頬を誤魔化すように黄瀬を見れば満面の泣き笑いで、


「だから、好きになるのも無理無いッスよね」

そう言った。










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