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それほど現実は甘くないと知ったのはいつだっただろうか。
・・・痛みによってリハビリすら満足に進まない状況。逸る気持ちと裏腹に思うように動かない体へつのる苛立ち。それらは確実に黄瀬を蝕み、自傷行為に走らせた。
止めても、止めても彼は止めない。それならば、とできる限りではあるが共に過ごした。見張る意味を込めたのと、自分に置き換え考えてみた結果だった。
物心ついた時から、と言っていい。俺と一緒にあったバスケを失ったら。やろうとする努力さえ報われ無かったら。
想像なんて出来なかった。けれどそれは想像したく無いほどに辛いことだからだと、心のどこかで悟った。
ー病院には連れ立って行っていた。黄瀬が嫌がっても、黄瀬の"センパイ"達が俺に黄瀬を託していたから、無理矢理。おそらく一番責任を感じているであろう彼らが俺に黄瀬を預けたのだ。果たさない訳にはいかない。
まぁ、言われたからが全てじゃないけれど。現状を知っておかなければ、何も始まらないと、無い頭で考えた末でもあった。
その何回目か。
病院の人間にも俺が知られてきた頃。黄瀬の担当医に俺だけ呼ばれた。
不安そうに見てくる黄瀬の頭を撫でて、大丈夫だと言い聞かせた。
悪い話のはずが無いと。
ーなんとか宥めて、独特の、薬品が香る診察室へ入った。
中には看護師が1人と、医師。手前の椅子を勧められ、腰をおろしたところでようやく医師の顔を表面から見た。
そこで感じたのは直感だったかもしれないし、奥底の本音だったのかもしれない。
まぁとりあえずこの部屋を包む空気なんかで悪い知らせだって事はわかった。
実は、
そう口を開いた医者が、とても言いにくそうだったのも鮮明に覚えてる。
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