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「─わっ!!」


藪を抜けた先は段差で、雨で濡れたそこ。一歩目を踏み外した私は、ズサザザと滑り落ちる。


…と、思われた。

背後から伸びてきた褐色の、大好きな人の腕が私を力一杯に引き寄せて、踵しか乗っていなかった段から手前へと無事に足場を確保する。

「ったく、逃げんなよな」

そう呟いた彼は私の手をしっかりと握ると、そのまま座り込んだ。

色んな事が一度に起こりすぎて頭の中の整理がつかない。ごちゃごちゃごちゃごちゃ、散らかり続ける。

疑問も、悲しさも、湧き出る感情すべてが浮かんでは跡形も無く消えていくのを繰り返す。

「うわぁ!?」

思考の海に浸かった頭では、瞬間的に体に起こった事態が理解出来なかった。

握り締められたままの手を強い力で前へと引かれて、彼の腕の中へと倒れ込んだのだ。

「あ…」

おみねっち。

と名前を呼ぼうとしたけれど、彼が言葉を紡ぐ方が早かった。

「お前が嫌なら、離してやるから」

そう言われ、瞬時に首を横に振った。嫌なわけ無い。むしろ嬉しい。ありったけの思いを込めて。

そうか。

呟いて、何故だかは分からないけれど嬉しそうな表情を浮かべた青峰っち。

そんな顔を、今までで一番近い距離で目の当たりにして頬に熱が集まったのは正直仕方ないと思う。

赤くなった顔を隠すように俯いて、彼の胸にすり寄ったのは逆効果だった。

トクン、トクンなんて規則正しい心音が聞こえてしまった。

余計にとても近いと言うことを意識せざるをえない状況に陥ったのだ。







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