>>3
─瞬間、何か聞こえた。
弾かれた様に顔を上げれば神社の入り口に、息を切らした青峰っち。
「黄瀬っ」
「あ…」
よろけながらも立ち上がり、これからどうしようかと思案する。
見つかってしまった。
次に、その口から聞こえる言葉が怖い。
カタカタと震え出す指先を握りしめて、とりあえず逃げなきゃ。ここから離れないと。その思いに突き動かされ、入ってきた時とは逆…つまり青峰っちがいないほうの藪へと踏み込んだ。
大して整備もされていないその中は、枝や葉がことごとく走ろうとする私へ絡みつく。
しかもジャージなら良かったものの、足がでる制服である。
一応、と顔は手で覆いながら進むけれど、多分その手の甲や太ももなんかは擦り傷だらけ。ぴりりとした細かい痛みがあちらこちらから主張してくるから。
─背後には気配と、足音。
なんで、嫌った奴なんかを追いかけたりするんスかね…。
また泣きそうになった自分を馬鹿にして、歩みを止めることなく緑の道なき道を行く。
雨天のせいで大した光もなく、元々もあるだろうが薄暗い藪の中。
前方が、少し白んで見えた。
back
next