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「でも、何でッスかねー」

あの時の青峰っち、どこか泣きそうだったんスよ。

いや、普通に完璧なる暴君でしたけど。視線は揺らいでた。

それに気づいた時、俺は決めたんだ。

「青峰っちの隣に立って…いや絶対に追い抜いて、もう二度とあんな顔はさせないって」

彼が泣きそうに見えたのは多分自分も常人よりは上をいっていて、彼の孤独を掠めたから。

そんな俺らより更に上をいっていた青峰っちの孤独とか、絶望とかは分からない。掠めただけでも底知れぬものだと寒気がしたから。

あれをひとりで抱え込まなきゃいけないなんて、と分からないなりにも泣いた。

で、やってきた三年時。差し出された進路希望調査票。



『第一希望 海常高校』



覚悟と夢を叶える為には違う高校へ進学しなければ行けない。

味方であれば彼を変えられない。相手、敵に、ならないと。

そう思って震える手で記入した。

第二、第三は適当に。

絶対海常に行く。去年の俺は強く、強くそう思っていた。今から考えれば、そこから運命だったのかも知れない。


「海常にこれて、ホント良かったッス」
呟いて、しばらく黙ったままの笠松センパイに目を向ければ、

「ならIHでケリつけんぞ」

ぐしゃぐしゃと頭を乱暴に混ぜられた。

「はいッス!!」

それは愛情からくるものだと知っているから、そのままにして笑顔で、返事を返した。

7月のはじめ、暑い暑い日のことだった。




君を幸せにしたかっただけの喜劇
(アンタをもう哀しませたく無かっただけ)









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