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そしてさっと笑みをかき消すと抱きしめていた腕をほどき、黄瀬を庇うように背へと匿うと
「すぐ終わる」
そう告げて、再び藍河のを見た。
相手は女子の平均身長、あって165。自然見下ろす形をとる。
さっきので怯んだ彼女は今頃脳内で自分を守るための方便でも築いているのだろうか。わなわなと震え、薄く開閉を繰り返す唇がどう仕様もないこの状況を語っていた。
馬鹿らしいとしか思えないが今の俺に優先されるのはトドメを刺すこと。
前に三歩出て黄瀬には聞こえないけれど、目の前のこの女にはハッキリ聞こえるくらいの絶妙な大きさで、音のナイフを突き立てた。
「お前がやったことは全部知ってる、残念だったな。こんなんじゃ俺の気は引けねぇよ」
ああ、それと。
「今度黄瀬に危害加えてみろ、俺が殺すからな」
今回は女だから許してやるよ。男だったら今頃屋上から落ちてたかもな。
最後は笑いを含みながら。できるだけ深く、深くコイツの痛みになるように。精神的にクるように。
まだ本人から直接聞いちゃいないが、おそらく黄瀬が受けたのはこんなもんじゃねぇんだよ。と。
濃く、濃く憎悪を声のトーンと表情に表せば、ついに心が折れたか手で顔を覆い俺と黄瀬の横をすり抜け屋上を出て行った。
アイツには他のキセキ達からもきっちりお返しがあるだろう。敵にする相手を間違った。
ザマァ見ろ。
小さく笑い、数分間気を鎮める為に屋上にいた。
隣の黄瀬は、何も喋らない。
それほどに…と藍河への怒りが再熱しかけたがそれは果たしたと、無理やりに心の奥へ押し込めた。
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