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「なら今の状況もあらかた察せられるな?」
「ああ」
出た声は思ったよりも低く、自分を驚かせた。瞬間。
「ならもういいのだよ」
「屋上、早く行って来なよ〜」
パッと抑えられていた腕を放され、道が開かれる。本当に瞬時の事で反応に困ると、
「何してるんですか。黄瀬さんを哀しませたいんですか」
ガン。
背を蹴られ、そのままの勢いでまた駆け出した。
「悪い!」
振り返りざまに叫べば、4人4様の笑みを返されて。次いで見据えるは正面、屋上へ続く階段。
この先に、彼女がいる。
* * * *
ドアを押し開ければ相対する女2人。
手前にアイツの金髪が見えたから、消去法で奥に見えるのが藍河。
こちらに背を向ける黄瀬は少し震えているようで、自然眉間に皺が寄った。
何しやがった、と。
「どうして…」
そう女が呟いたのは漸く俺に気がついたからか。
(バーカ、おせーよ)
隠しもしない侮蔑を滲ませ、嘲るように嗤うと黄瀬を自らの腕の中に抱き込んだ。
ビクッと肩を震わせた彼女はこちらを振り向かず、それに僅かな疑問と不安を覚えたが取り敢えず。
目の前の藍河を睨み付け、吐き捨てた。
「人の女貶めてそんなに楽しいか、藍河?」
目線は逸らさず、出来る限りの怒りと、憎悪を含ませれば一瞬彼女がたじろいだ。
(勝ったな)
確信し、更に言葉を重ねようとした所に不意に、彼女の声が聞こえた。
「何で……」
そちらを見れば今にも泣き出しそうな顔でこちらを仰ぐ。安心させるため、口角を上げ笑みを作るとその金糸をくしゃ、掻き回し
「悪ィ、遅くなった」
そう告げた。
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