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その鮮やかな色彩は俺達を黙らせるには十分だった。
少し背の高い草の中に目立つのは、金糸。うつ伏せに倒れていて顔は確認できないがその色は間違いなくナルトだった。
ふぅ、とサイが息を吐くのが聞こえ、いくら馬鹿なナルトでも風邪ひきますねと笑顔で言った。人間臭くなったサイに俺までつられて顔が綻んだ。

「ナルト、」

倒れているナルトを起そうと肩に触れようとした瞬間だった。

「………!!」

瞬間に目が見開かれ碧眼に俺が写った。それと同時にナルトの手にはクナイが握られ、そのクナイは俺の喉元に突き付けられていた。
ひんやりとクナイの冷たさが伝わる。
ナルトを抱き起こそうとしていた体制のまま、俺は必然的にナルトと見つ合う形になる。

「あー…迂闊だったね、」

よくよく見れば、いつものジャージではなくベストに木ノ葉の正式な忍服それに背丈も俺の知るナルトとは違い、まるでナルトが成長したかのような姿だった。
浮かれてた、安心した、ナルトが見つかったのだと。
チャクラもナルトのもので、完全に安心しきっていた。もしかすると、敵の新術かもしれないな、と頭で冷静に考えていた。
だけども、不思議とその安心感が消えることはなかった。

「…っは、」

「カカシ先生!」

後ろでサクラの声が聞こえたが、俺は動けない。喉元にクナイが突きつけられていることもあるけど。
急激に意識を取り戻した為か、苦しそうに浅い呼吸を繰り返す目の前のナルトから、目が離せなかった。
視線は交えたまま、片手にはクナイ、もう片方の手は苦しいのか胸元を掴んでいる。
碧眼には涙の薄い膜を張って、酸欠なのか目元が赤く鼻も頬も赤い。
見惚れていた、素直に。唯でさえ、ナルトに恋してる俺だ。堪らなく、ごくりと喉が鳴った。

その一瞬の隙に俺の懐に入っていたナルトは一気に距離を離し、俺達と対峙した。
距離を置くと分かる、目の前のナルトの異常さが。
俺の知るナルトより髪は少し長く、四肢は成長し綺麗な体のバランスを見せ付ける。何よりその瞳の意思の強さは、長年の経験からくる熟練した忍の眼差し。

「はぁっ…うっ、」

「ちょっとナルト…!」
「待てサクラ!」

やはり酸欠なのだろう、くらりとナルトの体が傾く。サクラが慌てて駆け寄ろうとするのを静止し、様子を窺う。
チャクラはどう探っても、ナルトのものだ。だけども、見た目が違い過ぎる。
時空間忍術か?未来のナルトとか、まさかね。

「は…?サクラ…」

そこで初めて目の前のナルトが口を開いた。
その声は紛れもなくナルトで、でも心なしか声も少し低い気がする。
サクラの姿を確認したかと思うと、ナルトは耐え切れず地面に倒れた。
俺の後ろでサクラがナルトの名前を叫んだ。

「は…はぁっ…ちょっと、ギブな…」

ごろんと、地面で寝返りの様に寝転ぶナルトに俺はまだ思考が追いつかず。
少しの時間ナルトは寝転んでいた。なんというか不謹慎だけど、可愛い。
落ち着いたのか、寝転がっていたナルトはよいしょ、と重たそうに体を起しそのまま地面に胡坐をかいて座り込んだ。

「あー…えっと、」

気まずそうに言葉を濁し、こちらを見るナルト。だが、明らかにナルトではなかった。

「カカシ先生、こいつって本当にナルトなんですか?」
「僕もそう思ったけどチャクラはナルトなんだよね。」
「根のサイが言うならそうなんだろうけど…」
「カカシさんにクナイ向けるなんて、」
「そこよね…」

「こそこそ話すのやめろってばよ…聞こえてるし、」

びくっ、とサクラとサイ。サクラなんて明らか愛想笑いしちゃってるし。
俺は溜息をついて未だ状況が分からない事態を何とか進展させようと思い、ナルトでありナルトではないこいつに話かけた。

「えっと、確認するけど…ナルト?」
「だってばよ。」

地面に座ったままの体勢でナルトと話をする。なんと言うか、違和感が否めない。
このナルトは何者なのか。

「そこのピンクの子ってば、サクラ、だっけ?」
「そ、そうだけど、」
「美人さんになったな!」

「は?」

そう言ってニシシ、と白い歯を見せて笑うナルトは、確かに俺の知るナルトそのもの。
俺の口からは間抜けな声が出た、あの、ナルトが、サクラに。
サクラはサクラで「何言ってんのよ!」と怒鳴りつつも、頬を染めて。
このナルトはサクラと面識があるのだろうか。

(そ、そんなことよりも…!)

「お前は何者だ?少なくとも俺達の知るナルトじゃないんだけどね?」
「あー…ははは、時空間忍術をこう…ちっと間違ってな?」
「ということは、未来のナルト?ってことになるのかな。」

四代目の息子であるナルトなら、父の遺した時空間忍術を数年後に使いこなすというのも有り得ない話ではない。でもさ、さっきから何と言うか喋り方というか雰囲気というか。

「ナルト…お前歳いくつよ?」
「は?いくつって…カカシってばさっきから俺のこと先生って呼んでくんねぇのな?」

「ん?」
「はい?」

カカシ、先生と呼んでくれない、ナルトを?ナルトを!?
そういえば見た目は俺と然程変わらないように思える。その雰囲気もどこか落ち着いていて、

「駄目だ混乱してきたわ…」
「先生も右に同じ、」



つづく

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