狡い大人は笑った

一部

カカシ先生が俺の手を引いて先を歩いていく。
誰かに見られたら恥ずかしいだろ!って言ったら、カカシ先生は「いいじゃない。」って笑った。
いくら子供でも俺も一応下忍だし、それに男だし、そんな俺がカカシ先生と手を繋いで帰る、なんておかしいだろ。
それなのにカカシ先生は平然と俺と手を繋いでいる。

(変なカカシ先生…)

ふとカカシ先生を見上げた。
表情はもちろん口布で見えないから、何を考えているのか分からない。

「ナルト、どうしたの?」
「へ?あっ…え、いや何もないってばよ…」
「見てたでしょ?」

カカシ先生は背中にも目があるのかよ。
言葉に詰まった俺にカカシ先生は笑って、「行こうか。」って言ってまた歩き始めた。
それにしても先生ってばどこ行くんだろ。
一楽はさっき奢ってもらったし、今から任務があるなんて事はない。

「カカシ先生ってばどこ行くんだってばよ?」
「どこって俺の家。」
「何で?」
「特に理由はないんだけどね。」

そう言ってカカシ先生はまた笑う。
俺はカカシ先生の笑った顔に弱いと思う。別に俺たちは恋人同士とか好き合ってるとかそんな関係じゃない。男同士だし。俺はまだ子供としか先生には見られてない。でも俺はなぜかカカシ先生に笑いかけられると黙ってしまう。
今だってそうだ。一楽奢ってやるって言うからカカシ先生について行った。
おかわり三杯して、ごちそうさまって言ってそのまま俺の家に帰ろうとしたらカカシ先生が笑って手を繋いできた。そんでそのまま今の状況。

「ここだよ。」
「カカシ先生んち?」
「そ、入る?」
「カカシ先生が連れてきたんだってばよ!」
「はいはい。」

初めて見たカカシ先生の部屋をぐるっと見渡した。
俺のボロアパートよりずっと綺麗で広くてちょっとムカついた。

「上がりなよ。」
「お、お邪魔しますってばよ…」

俺の返事にまた先生は笑った。
靴を脱いで言われた通りに上がって、座ってなさいって言われたから言われた通りに椅子に座った。
なんか変に緊張する。シカマルとかキバの家には何度も行ったことはあるけど、こんな風に大人の、しかもカカシ先生の家にいるのはやっぱり落ち着かない。
でも俺だけがカカシ先生の部屋に呼ばれたのって、もしかして俺って先生に信頼されてる?

「ナルトにはこれね。」
「ありがとうってば。」

はい、って手渡されたホットミルクは、先生が気を利かしくれたのかいつもより甘い香りがした。
カカシ先生はコーヒー、よくそんな苦いの飲めるよな…。
先生は俺の向かいで平然とコーヒーを飲んでいる。

(…は?)

カカシ先生が俺の目の前で平然とコーヒーを飲んでいる、頭の中で繰り返してみる。

「カカシ先生、あぁあぁあああ!熱っ!」
「こらこら、」

カカシ先生の七不思議の最大の謎!カカシ先生の素顔!
今俺はその最大の謎を目にしている!
慌ててちょっとホットミルクを零してしまったけど、先生が拭いてくれた。
なんていうか、なんていうかさ、カカシ先生。

「格好いいってば…」
「あ、そう。ありがとね、ナールト。」
「…!!」

思ったことがそのまま口に出てしまった。
俺にそう言って笑ったカカシ先生はもっと格好いい、ちょっと違うかもしれない、綺麗って言ったほうがいいかもしれない。
とにかく俺はそんなカカシ先生の素顔に完璧見とれてた。

「ナルト、こっちおいで。」
「うぇ…!?」
「うえって…先生傷つくんですけど…」
「あ、いや…違っ…てば…」

変な声出た。最悪。
違うってばよ、って言ったらまた笑って「こっちおいで。」って手招きするカカシ先生。
仕方ないから、カカシ先生の方に行った。

「ちょ、うわ…!」

よいしょ、ってカカシ先生おっさんかよ。
俺は気づけば、カカシ先生と向かい合う形で先生の膝の上に乗せられていた。
要は抱っこされていた。

(恥ずかしいだろ…!こんなの!)

多分、今俺の顔はトマトみたいに真っ赤だ、顔が熱い。
カカシ先生の整った綺麗な顔が目の前にある。
それだけで俺の心臓はドキドキしてる。
こんなの、カカシ先生といて今までなかったのに。

「ね、ナルト。」
「なななななんだってばよ!」
「顔真っ赤だよ。」
「分かってるってばよ!カカシ先生のばかっ!」

俺は急いでカカシ先生の膝から降りようとしてるのに、先生はそれを許してくれない。
足をバタバタさせたら、これも突然に、ぎゅうって抱きしめられた。
俺の頭はパンク寸前。

「これで少しは俺のこと、意識してくれた?」
「あっ…」

耳元で喋るな!って怒鳴ってやりたい。
背中がぞわってして、変な感じがした。
カカシ先生はそんなことはお構いなしに、また俺の耳元で何か言おうとするから、慌てて俺は先生を押し返した。

「離せってば…!」
「やだ。」
「カカシ先生ぇ…!」

俺泣きそう。ドキドキと恥ずかしいって気持ちで、パンクしそう。
すると、ぱっとカカシ先生は離してくれた。
それでもカカシ先生の顔は近くて、俺はまたドキドキした。

「意識、してくれたみたいだね。」
「な、なんだってばよ…それ…」
「ドキドキする?」
「……するってばよ。」
「俺に抱きしめられてどうだった?」
「…ドキドキして苦しかったってばよ。」
「はい、合格。」
「何が?」

俺が聞き返してもカカシ先生はにこにこ笑って、答えを教えてくれなかった。

「これはナルトの宿題ね。」

そう笑うカカシ先生の笑顔はどこか幸せそうだった。



終わり

(はぁあぁ…ナルト可愛かったなぁ…あのままキスぐらい…はっ!駄目だ駄目だそうなれば確実に犯罪しゃ ― いやナルトに嫌われる方が辛いな…)


結局はカカシ先生の策略ですよ、そんな話。
カカシ先生は中身は変態。
お粗末様でした。


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