あなたは無神論者

「なぁ、カカシ先生。」
「んー、何?」

ぽつりぽつりと小さな声で話し始めたナルト。
目線の先には、簡単に作られた墓が二つある。
ナルトの手は土で汚れていて、肩は小さく震えていた。
まだアカデミーを出たばかりのこの子達には、忍としての生き方にこうも残酷な生き方があると言うことを、初めて目の当たりにした衝撃が大きいのかもしれない。
サスケもサクラも黙ったまま俯いている。

「白はさ、多分幸せだったんだってばよ。」

今この子は何を想って何を考えているんだろうね。
それからナルトはずっと墓を見つめていた。

 * * *

「カカシ先生、」
「何?」

波の国からの帰還途中、不意にナルトに手を引かれた。
ぎゅっと握ってくるその姿はやはり、まだまだ幼くて。
この出来事を整理するのにはあまりに時間が掛かるんだろう。
今も不安そうに、けれども真っ直ぐに俺を見つめてくる。

「カカシ先生は、神様っていると思う?」

また強く手を握られた。
子供らしい、ナルトらしい発想だ。きっとあの二人のことを思って、もし神様がいてあの二人を救ってくれれば、多分そんな事を思ったんだろう。

「俺はね、いないと思うよ。」
「そっか…」

もし神様なんていう万能の存在がいたなら、オビトもリンも、ミナト先生だって救ってくれたはずでしょ。それにナルトだって孤独になる必要はなかった。
俺の答えにナルトは俯いてしまって、そのまま手を繋いで帰った。








(…そんなこともあったね。)

目の前で泣きじゃくるのは、俺の愛しい子。
俺は頭を撫でて、ナルトの頬に手を添えた。
つい先程まで冷たかった俺には、触れるナルトの頬や伝う涙までとても温かく感じた。
砂埃で汚れた忍服の袖で泣きはらした顔を拭こうとするから、俺は慌ててそれを止めた。

「…う、カカシ先、生ぇっ…!ぐずっ…」
「泣かないの…」
「よか…ったてばよ…生き、返って…う、うわあぁあん!」
「ナルト、」

声が上ずって顔は涙と鼻水でぐちょぐちょだけど、それでも愛しい。
ナルトを力一杯抱き締めて、ぐりぐり頭を肩に擦り付けるその仕草に、温かさに、俺も涙ぐんでしまった。

「先生、カカシ先生ぇ…!」
「…うん、…」
「…好き、大好きだってばぁ…カカシ先生!うっ、」

ナルト、ナルト。
もしかするとナルトが昔言ってた様に神様はいるのかもしれない。
俺は生き返って、俺が一番聞きたい言葉を贈ってくれた。
こんな幸せって、ある?

「ナルト…、」
「カカシ先生ぇ!」

 * * *

一通りナルトが落ち着いた後、ナルトは自分が俺に好きだと口走ったことに真っ青になってたけど、俺にはそれも愛しく思えた。
それから、ナルトを背負って木ノ葉へ向かう。背中に感じるナルトの体温が心地いい。
ナルトは時折俺の背中に頬擦りして、俺の体温を確かめているようだった。

「ね、…ナルト。」
「ぐすっ…なんだってば…カカシ先生?」

あの時のナルトの言葉を思い返した。
あぁ、神様 ―

「ううん、何でもないよ。」
「………ん、」




「神様なんて、いねぇってばよ…………カカシ先生ぇ、」

回された手に力が籠もった。



終わり

すみません
あまり中身のないものになってしまいました…考えるな!感じろ!みたいな


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