3

「ナルトって…」
「うずまきナルトか…?」

「…何?」
「カカシ、あんた何かまずい事言ったんじゃ…」
「別にまずい事なんて言ってないでしょ!」

急に村人がざわつき始めた。
さっきまで穏やかだった空気が一変、殺伐とした空気に変わった。
村人の口から次々とナルト先生の名前が伝言のように伝わっていく。
その異様な雰囲気に俺たちも不審に思い、身構える。
一体全体何がどうなっているのか、分からない。
けれど、この雰囲気の変わり様や村人の様子の変化は明らかにおかしい。
その雰囲気は敵の陣中のど真ん中に立たされたときと似ていた。
確か、この村は木ノ葉からの移住者で作られていて、その中には元忍だっている。
下手をすれば、中忍上忍だった連中もいるかもしれない。
そんな中で俺たち三人では、最悪の事態だって考えられる。

「……一体何だっていうのさ、」

村人の視線は先ほどとは打って変わって冷たかった。
明らかな殺気を浴びせられている、サクラは少しだけ手が震えていた。
下忍の子供三人ではどうすればいいのか、分からなかった。

「お前ら、帰るってばよ。」

「ナルト先生っ…?」

ナルト先生…!先生の声が、俺たちを安心させた。
怯えてるサクラの隣に立ちサクラはナルト先生のベストの裾を掴んだ。
先ほどの冷たい空気が先生の温かい気配によって少しだけ中和されたような。

「………ごめんな、」
「え?」

その謝罪は何に対しての言葉だったのか、俺たちには分からなかった。
ナルト先生がサクラ、サスケ、そして俺に里に帰るように促す。村人たちとは言葉を一切交わさずに。
村に背を向けて帰ろうとする俺たちに聞こえてきたのは、やっぱり意味の分からない言葉だった。

「化け狐か…」「あれがまだ里にいるのか、」「狐め。」

俺の知らないナルト先生がいる。ナルト先生は何も言わなかった。

 * * *

「…」
「…」
「…」

俺たち三人何も喋らなかった。ナルト先生が現れたあの瞬間、俺たちに向けられた冷たい視線が一気にナルト先生に向けられたのが分かった。村人たちの豹変もナルト先生の名前がきっかけだった。
一体何だっていうんだよ。

「おい、ナルト…」
「ん?」
「あんたがこの任務を俺たちだけで行かせたのは…ああなることが分かっていたからか?」

サスケがナルト先生に聞いた。それは俺も考えたことだったけど、どこか触れてはいけない気がしていたから。
サスケの問いにナルト先生は困ったような、少し苦しそうな表情をした。
そんな先生の顔、見たくないと思ったのに。

「あぁ…ごめんな、」
「どうして先生が謝るんですか…?」

サクラの問いかけに俺の心臓が跳ねた。聞くなよ、頼むから。
これ以上ナルト先生にこんな顔して欲しくないのに。

「ほらこれ踏め。一気に木ノ葉まで飛ぶから。」
「ナルト!説明しろ!」
「サスケくん…」

来た時と同じように時空間忍術で木ノ葉まで帰還するつもりだ。そして、ナルト先生は何も言う気はないんだ。

「んじゃ、解散!今日の任務、頑張ってたな!」

「あ、ちょっと…先生!」
「ナルト!」

木ノ葉のあうんの門に着いたとき、ナルト先生はやはり何も言わず瞬身で姿を消した。

(ナルト先生…)



つづく

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -