初戀の萌し・3

「……?」

「おい、総司。使いまわされた口説き文句言ってるんじゃねぇよ。」

「嫌だなぁ。歳さんの真似なんてしてませんよ。…あっ!思い出した!ほら、僕が珍妙な娘さんを見たって話をしましたよね?」

「ああ、何日か前に話してた女の話か。」

「ええ、そうですよ。彼女とこの娘さんがあんまりそっくりだから、つい聞きたくなって。」

総司と呼ばれた人は嬉しそうに、私に笑いかける。
うぅ……帰りにくい状況だな。

「あの、珍妙って…?」

「ああ、ごめんなさい。十日程前に異人のような、短い袴みたいなの穿いて歩いてた娘さんを見かけましてね。」

それって…私だ。知らない内に見られてたなんて。制服はこっちに来た日にしか着ていない。あれからずっと着物だもの。あの時、龍馬さん達皆といたよね……バレてる?

「ほぉ…どうやら、総司が見た娘はあんたみたいだな。」

あっ!私、考えてる事が顔に出てるんだ!下手に否定しない方が良いかも…。

「あの、はい。…きっとそれは私です…」

「そうでしょう!やっぱり本当にいた!土方さん、僕は寝ぼけもいないし、嘘も言って無かったでしょう?」

「ああ、判ったよ!で、なんだってお前はそんな格好をしていたんだ?ああ、名前も聞いて無かったな。」

名前…言わなきゃ怪しまれるよね…。

「詩乃と言います…。」

「詩乃さん。なかなか、洒落た名前ですね。僕は沖田総司、隣の怖そうな人が土方歳三さんです。」

「はぁ、沖田さんに土方さん。」

「それで?詩乃はそんな着物を何処で手に入れたんだ?……お前、異人と懇意にしてるのか?」

「へっ??イジンとコンイって?」

解らない言葉にぽかんとしていると、土方さんがズイッと顔を近付けて来た。

「エゲレスやらアメリカの奴らの妾なのかって聞いてんだよ。」

鋭い眼で刺すように見つめて来る。

「め…かけ?……妾?!ち、違いますよ!!」

頭の中で平仮名が漢字に一致して、顔が真っ赤になる。この人、なんて事言うんだろう。

「土方さん、いきなりそんな事言われて、詩乃さんビックリしてるじゃないですか!」

「ふん、だが異国風の着物を着ていたのが間違いないなら、その出所は異人だろうが。少し、屯所に来て話ししねぇか?」

えっ?!私…何か怪しまれてるの?…まずいよ…住んでる所も何も言えない。龍馬さん達を危険にするもの。それだけは駄目だ…。
かと言って…この二人から逃げられる気がしない…。二人共、飄々としてるのに隙が全く無い。
…どうしよう……






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