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プランツドールパロ


椿が付き合いでプランツドールのお店に行く事になる。
綺麗な少女たちに目を惹かれながらうろうろしているうちに、
くいくいっと衣服の一部を引っ張られる感触を覚える。
どうせ友達だろうと「なに?」と返事しても何も言わない事に違和感を感じて
振り返るとそこには日本人離れした美しさを持つ少年が立っていた。

「あっちゃー、気に入られちまったか。」

いかにも"しまった"という表情を浮かべた店長達海に嫌な予感を覚える椿。
椿の服を握ったまま離そうとしないショタジーノ。
そこで、椿はプランツドールを知る事になる。
目の前の少年は名人と呼ばれる中でも特に才ある職人の手によって生まれた生ける人形である事。
主人の仕事は着替えと、ミルクと、愛情を与える事。
客が買いたいプランツドールを選ぶわけではなく、プランツドールが主人を選ぶ事。
気にいった主人以外には返事すらしない眠り姫、もとい、眠り王子な事。
そして、そうなってしまったからには他の主人には目もくれなくなるので
このままでは"枯れる"事。枯れる=死と知ってしまった椿は見捨てられず、
とんでもない価格のジーノを引き取る事を決めた。

店長の望みはプランツ達の幸せなので、特例として椿にはいろんなサービスを送る。
元は家ひとつ買えるような額からの大幅な値引き、高額な服の無料提供、
何十年返済にかかっても利息を要求しない事。
荷だくさんになった椿を無表情に覗きこむジーノに「大丈夫ですよ」と返す椿。
その時初めて花が咲いたような笑顔を見せるジーノ、びっくりしてこける椿。
大丈夫かなああいつら、と心配そうに見送る達海。

最初は、大丈夫じゃなかった。
出したミルクは舐めるだけで飲まないし、あれ以来鼻で笑うような仕草を見せても笑顔はなかなか見せてくれない。
かと思ったら女性相手には笑顔をふりまくジーノに椿は振り回される。
「俺より女性が主人になるべきじゃないか」と何度も店長の達海に相談に行くんだけど、その度なんだか不機嫌になるジーノ。
振り回されて椿はくたくたなんだけど、ジーノの笑顔が忘れられなくて愛情だけは無くさなかった。
回数をこなすうちに、ジーノの趣味が分かるようになって仲は改善していく。
そして、達海の元に行く度不機嫌になるのはやきもちである事が発覚する。
ジーノに言わせれば、「他人に相談するくらいなら、もっと僕に構いなよ。」そういう事らしい。

感嘆の意味を込めて落とすため息や「本当に綺麗だ」等こぼす言葉に反応してどんどん
美しい男性になるジーノ、出会った時は少年だったのに高校生の椿が社会人になるころには成人男性の姿にまで育つ。
友人というよりは家族となった存在に変わらぬ愛情を注ぐ椿。
しかしジーノはある時から複雑な色をはらんだ笑顔を返すようになる。
嫌な予感を感じる椿。
だけれどそれはすぐに表に出る事でなく一見、何も変わらなく穏やかな日々が続く。
仕事で忙しくなったら不機嫌に、構えば嬉しげに、褒めれば自信をもった笑みを浮かべるジーノ。
二人にとって楽しい毎日を送り椿には大切に、大切に、想われて育つ。

しかし、次第に肌が荒れ、髪のツヤが無くなりジーノは枯れ始める。
メンテナンスに出しても異常は無く、病気ではない。
なにか自分が悪かったのかと達海に相談するも、達海から見ても椿とジーノの仲は良好でこうなる原因が思い浮かばないと告げられる。
椿に心配される度に美しく笑うジーノ。
育て始めた時みたいにこちらを無視する事もなく、励ますように笑うジーノを椿は泣いて抱きしめる。
その裏でジーノは満足げに、悲しげに笑う。

結局ジーノは椿に看取られながら枯れてしまう。
その際椿は初めてジーノの声を聞いた。
残された言葉は「ありがとう」「ごめんね」「愛してる」
どうして・・・と泣く椿に釣られるように、大粒の涙をこぼすジーノ。
その涙は宝石へとかわり椿の足元に転がっていく。

「これは俺の想像だけど」

そう前置きして達海は枯れた原因を話しだした。

「お前はプランツドールの主人として素晴らしい育て方をしたよ。
何も間違っちゃいなかった。だけど、ジーノは枯れた。
ならば、足りなかったのは愛情だ。
さっきも言ったけど、おまえは何も間違いなんてしていない。
お前は十分にジーノに愛情を与えた、しかしジーノは満足できなかった。
自分の望むかたちではなかったから。

その為にきっとジーノはなりたかったんだ、人間に。
だからこそ信じられないような早さで成長したんだ。
そして人間になって・・・お前から愛情を得ようとした。」

達海の言う事が理解できない椿。言葉を止めて、じっと達海を見る。
そんな椿をじっと見返す達海はゆっくりと一つの結論を口にした。

「ジーノはお前に恋してたんだ。」


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涙が宝石に代わるのは原作の設定です。
観用少女というだけあって、原作に少年型のプランツドールは存在しません。
他にも原作に無い設定をいろいろ含んでますので、原作とは別物として見て下さい。

プランツドールの涙から出来る宝石は非常に高価な品です。
それでジーノの支払い出来るけれど、どうする?と椿は問われます。
しかし、椿は宝石を手放しません。
理由はジーノが残してくれた最後の物だから。


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