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大人って何だ



「俺、二十歳ってもっと大人だと思ってました」

珍しく椿がきちりとネクタイを締めていたからちょっと聞いてみたら
苦労してたら後藤さんがしてくれたッスと照れながら椿は答えた。
それはいい、後藤だしな。気にくわないのはそのあとだ。

照れた顔で目キラキラさせて、いかにも尊敬のまなざしを浮かべた椿は言った。
「後藤さん、かっこいいですよね。俺もあんな風になりたいって憧れます」

後藤が、かっこいい?
思わずどこがと聞いたらスーツ姿が似合う大人の男で余裕がある所と椿は言った。
たしかにお前はスーツを着てるというより、着られてる感じだもんなあ。
一見ただの高校生に見えかねない。

今日みたいにきっちりスーツを着て、首元までネクタイ締めてたら
いや、それでもリクルート中の大学生だな。
年齢的にもしょうがない。
社会人と言っても中身はそうはかわらないからなあ、この仕事。

それより後藤だ。
夢を壊すようで言わないが、あいつそんな大人じゃないぞ。
ちょっとつついたら直ぐ取り乱すし、酒飲んだら陽気になって絡むし、直ぐ泣くし。
スーツはまあ、似あうな。
俺だって着ないだけで、着れば似あうんじゃね?

「・・・・・。」

その時、貰ったっきり一度も袖を通さなかったチームのスーツと目が合った。





「お前には負けねえぞ、後藤」

開口一番になんのつもりなんだ、達海。
珍しくいつものジャケットでは無く、ブレザーを着こなした達海がいたので声をかけたら、
ぎらりと睨まれ、いかにも不機嫌ですといった口調で言われた。
何か気に障る事でもしただろうか?
理由を聞いたら、別にと言ってそっぽ向いた。
・・だったら話してくれよ達海。

それにしても、お前のスーツ姿って
後藤は上から下まで達海をみるとぽつりと言った。

「違和感、あるよなあ。」
見慣れてないのも原因だろうけど、なんか、こう、ホストみたいだ。
着なれてない雰囲気が若々しくて正直少し、羨ましい。


うお!いっそう達海の雰囲気が刺々しくなった!
え、ちょ、なんだ! スーツが違和感あるって言った位でそんなに怒るもんなのか?
何を言っても達海の逆鱗に触れてしまいそうで次の言葉を言えないでいると勝気な女神がこの雰囲気を壊してくれた。

「コラー! 何してるの達海さん、もう取材の人待ちくたびれてるよ!早く行って!!」

取り付く島もない物言いにしぶしぶと言った様子で達海が従う。
ぐるりと部屋を見渡して、兄弟げんか中の会長たちを鎮めると

「みんな仕事に戻ってよ! 新聞なんていつでも読めるでしょう!」
と、さぼってる職員に活を入れる。
後藤さんも!と飛び火をうける前に俺も仕事に戻るべきだろう。
こうなった有里ちゃんを止めれる人物なんて、ここには居ないのだ。


ようやく動き出したフロント陣の様子を見た有里が重いため息をついてぼそりと言った。


「大人なんてこんなもんよ、椿君」


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