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 3



「痛っ!」

首筋を噛まれた。
おそらく手加減はされていただろうがそれでも涙がにじむほどの痛さだ。


「・・・達海さん、待ってって言ったじゃ、ないですか。」

やった椿の目にも涙が浮かんでいる。
こっちは感情ででてきたものというより、さんざん快楽におぼれかけた生理的なもんだろう。
恨みがましいきつい目線が痛いのでまぶたに唇を落とし強引に閉じさせた。
悪かった。けど

「大丈夫、って確信あったからな。」

目を大きく開け、何か言いたそうに唇が開いた。
数秒こちらを見つめてきたが、全てを受け入れるように不抜けた顔でへなりと笑う。

「・・はぁ、もうしょうがない人ッスね。」

なあ、椿。
お前がすぐそうやって、眉をしかめつつも笑って許してしまうから、俺は反省はするけど後悔しないんだと思う。
これがだれでもではなく俺に対してだけならもっとうれしいんだけど?
おまえ誰に何言われても、驚いて、困って、最後は苦笑いで許しちゃうんだろ?
そこ、なんとかならないもんかねえ。

椿の髪を梳きながら長く伸びた耳にキスをする。
舌をはわして、根元までたどりつくと、そこにももう一度キス。
そのつど、ちゅ、ちゅ、と小さな水音がして、恥ずかしいのか椿が複雑そうな表情をした。





達海さんの筋張った指が、肌を這い、敏感な部分をいたずらに刺激してくる。
そのたび聞きたくも出したくもないものが出て、いいようにされる悔しさと
それすらもどうでもよくなる快楽につぶされてしまいそうだった。

「・・・・っつ、は、ぁああ、んんっつ、っぁあっ!!」

ああ、もう、やばい、やばい、やばい。
心臓がバクバク言ってる、まるで警報がみたいだ。
本当に、この身体はやばい。それしか考えられない。
達海さんの指が触れるだけで神経が反応し、その指が動くだけで堪える事が出来ずに声が出る。
今までどうやって我慢ってしてたっけ?
身体の端から端を高速に駆け回る激しい感覚に振り回される。
それだけで済まず、さっきから出したくてしょうがなかった。


「すっげえな、もう、限界だろう? お前。」

恥ずかしいが、その通りだ。
もう頭の中さえ痺れてしまっているようで、今自分がどんな状態かさえ分からなかった。
とにかく熱くて、痛いくらいの激しさでそこが疼く。
解放されたくて必死にうなづいた。

「ほら、いっぺん出しとけ」

そう声がして、とたんに包まれるぬめりとした暖かい感触。
もしかしてと思うより先に一層激しくなった快感に酔う事すらできず、体中に力がこもる。
硬い何かに刺激された瞬間、いっそう強い何かに引っ張られ、全てが真っ白になった。


「・・・・っはぁあ!!」



なんだいまの、なんだこれ、いまなにがおこっている。
そんな当たり前の事すら分からない。
滲んだ涙がこぼれて、ようやく霞んだ視界が正常に戻っていく。
そうしてうつったのは。

口の端から濁った液状のものをこぼす達海さんで。
そうして、ようやく俺は今自分が何をしたか理解した。


「うぁあああ、ごめんなさい!」
「うるせえよ。」
「俺、達海さんの口に・・」

「・・・っちぇ、味はいつもと同じだわ。」

何言ってんだこの人ぉおおお。
いや、今言いたい事は達海さんの口でイってしまった事を謝りたいはずなのに
まったく本人が別の事考えているせいで、まるで会話が成立していない。

そして、俺の体すらこちらの意志を無視するような事が起こっていた。
また快楽を望んで思考を塗りつぶし始めたのだ。

「元気だな、お前。」
「な、なん、で・・・?」

何もしなくても勃ちあがり始めたモノにどうしようもない情けない気分になる。
だが落ち込む余裕すら無くあの膨大な熱が神経に襲いかかり始め、じわりと、だけど確実に理性を蝕みはじめていた。

「そういや、椿知ってるか?あの雑誌になんでウサギが使われてるか。」

知らない、それに考えようとする事すら辛かった。

「うさぎって万年発情期な上、早漏なんだって。」

だからあっちじゃウサギが繁栄のシンボルらしいぞ。
少し楽しむようなその言い方になんだか泣きだしたくなった。
要するに俺、今。


「1回や2回じゃあどうにもなんないかもな、それ。」

なんだそれ、嘘だろ。そう叫びたくても本能が肯定する。
はやく欲しくて欲しくて堪らなかった。同時に、みっともなくて見られたくなくて
縋りつきたくなる自分自身を許せなかった。
矛盾した感情と本能がぶつかって涙がこぼれる、苦しい、苦しい。



「つばき」


その声につられるように目を開ける。

「責任、全部背負ってやるよ、だから」




「全部見せろ。」









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