文章 | ナノ


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受け入れがたい内容にどうすればいいのか考えてると椿が不安そうに顔を歪める。
その表情が見てられなくて、思わず指を伸ばしていた。
たつみ、さん。と椿がちいさな声をもらす。
艶やかな黒髪ごと、がしがしと頭を撫でた。

「他はどうだ?具合は悪くねえのか?」
「き、気持ち悪いとか、頭痛いとか、そんなのは無いです!」

よかった。
安堵からか長い息がもれた。
かき撫でていた手を止めずにいると、とろりと椿の目が細まる。
ピンと伸びてせわしなく動いていた耳は今はぺたりと垂れてきた。
なんだか気持ちよさそうだ。

「こんな時でも、体の心配してくれるんですね・・達海さん。」

甘えるように椿が体を寄せてくる。
異常に怯えながら一人で耐えてきた反動だろう。
好きにさせてやりたくて体全部を使って椿を抱きしめた。

「嬉しいです。不安でたまらなかったから、そう言ってくれて何だかほっとしました。」

髪の中に指を差し込み、ゆっくり指を滑らして肌を撫でる。
同じ動きを繰り返す内に混乱していた思考がほどけてきた。
理由は分からないが、体に害は無いのなら焦る必要もないだろう。
そう思うと余裕が生まれて、今度は好奇心がじわじわと騒ぎ始める。


こいつの体、今どうなってるんだろ?

形のよい後頭部を撫で終えた手はうなじをすべり肩をたどると背を這い腰をくだる。
布ごしに下へと下へと伸ばしていると尻のあたりに何か膨らみを感じた。

「え! あ、ちょ」

椿が制止しようとするが無視だ。
今度はジャージの中に指を潜らせて滑らしたあと、引き落とす。
そうすると丸みを帯びた尻尾らしきものが顔を見せた。

「おお、しっぽまで・・」

恥ずかしがるように、椿が俺の腕を握りしめた。
指で尻尾を挟むように掴み、ゆっくり上下さすと極上のさわり心地がした。
つるりと滑るように指に触れて逆なでるとちくちく肌を刺激し少しくすぐったい。

腕に指が食い込む感触、気付けば腕の中の椿が震えている。

つばき、と名前を呼べば、目に涙を溜めながら真っ赤でゆっくり顔を上げてきた。
その表情にぞわりと寒気のような震えが走る。
今度は五本の指で掴むように握るとバラバラに動かすと小さく椿の身体が震え、
俺の胸にいっそう強く顔を押しつけて耐えている。
もう、確信していた。これは苦しみや痛みからではない。

「気持ちイイの?」

鼻先に当たる耳にささやいてやれば、体をひねらせて避けようとする。
だから今度はその耳を唇でかるく噛んで捕まえた。

「ヒッ」
「・・性感帯、みたいだな、しっぽも耳も」
「駄目、駄目、これやば、駄目です、ほんと駄目です、しゃれにならなっ、ァウ・・!」

そうと分かれば放す訳が無い。
椿は今更になって暴れ出した。
腕と胸に置いた手に力を入れ、必死に俺から離れようとする。
その都度、力が入れにくくなるよう姿勢を変えながら、指先で尻尾をくすぐれば
甘い吐息が椿の口からこぼれた。

「椿、いい子だから大人しくしてろよ。」
「ほんっと、やめてくださ、い、ふぁ、ああっ、」

何度触れても飽きないさわり心地に気を良くして、しぼるように力をかけながら包むと今度は放して指で毛流れに沿ってさする。
そんな事を繰り返す内に椿の手から力が抜けていき、ついにはもたれかかるようにまでなった。
もはや縋りついていると言った方が良いだろう。

「・・お願いします、ほん、ッァ、も、少しだけ、待って、」
「もっとお前の事知りたいんだけど?」
「も、暴れませんから。言う事聞きますから、今は、ァ」

もっと声を聞きたい、泣かせたい。
完全に溶かして、意地や理性なんて奪い去ってしまいたい。
ふつふつとわき上がる好奇心に逆らえず、先に進まずにはいられなかった。
布の上からでも分かるほど存在を主張しはじめた前に手を伸ばせば、椿が止めようと指を絡ませて来る。
その必死さに疑問が湧いて一度手を止めると、椿が真剣な顔で声を絞り出した。
さんざん抵抗したもんだから既に椿の息は上がっている。


「ま、まだ後藤さんと、永田さんの声が、するんです、だから・・」
「聞こえないけど?」
「まだ仕事の話してます、取材とか、スポンサーとか、聞こえるから。」

へぇ。

「この耳、飾りってわけじゃねーんだな。」
「すっげーよく聞こえるッス。だから、」
「待ってほしいって?」
「はい、もう、帰りそうな、雰囲気ですから。」

黒い耳は天井に向かってまっすぐに立ちあがり、ピクピクと小刻みに動いている
内側の皮膚を舌でなぞれば、椿の声が高く裏返った。

「・・っな!?」

信じられない、と非難するように見上げてくる椿に唇の端を持ち上げ大丈夫と返す。
「お前が声出さなきゃ平気だろ。」
「駄目ですよっ なんか今日おかし、くて、出ちゃ、んんっ、ッスから、ほんと、もっ・・」

俺の耳では後藤と有里の会話は拾えない。
夕日も落ちかけたこの時間なら二人が帰るのもすぐだろうし、わざわざ声をかけてから帰る事もしないだろう。
すでに腰履きになっているジャージを膝まで下ろすと既に勃ち上がりかけてた根元を指で包んだ。

「・・・っ、・・・ふ。」

出てきたのは息をのみ込む些細な音。
見れば椿は俺の服に噛みつき、声を出すまいと耐えていた。
そのまま上に、下に、先っぽに、ゆっくり、ゆっくり動かしてみた。

「ふ、・・っ、・・ふ・・」

必死に服を噛みしめてしがみつく椿に僅かな違和感を感じる。
そこまでしなくても、元より椿は声をあまり出さないタイプだ。
そのぶん、吐息にまぎれて思わず漏れたような声に熱を煽られるのだが
今日の椿はいつもと明らかに違っていた。
そう言えば先ほど「今日はおかしい」と話してはいたが、
ウサギになるってのはこんな所にも影響するもんなんかね?

ん?

体をよじらせてなんとか攻め苦から逃れようとしていた椿が、表情を変え固まった。
肩に手を回し、しがみつくように俺に抱きついてくると耳元で声が落ちて来る。

「た、つみ。さん、足音が、っ・・近づいてきます・・。」
「ふうん。」

まだ俺の耳では分からなかった。
それならば大丈夫だろうと、指を前から放し、太ももを辿って尻尾に回す。

「ちょ、もしこんな所見られたらっ」

だってお前自分で鍵かけてたじゃん。
ねえよ。

「・・・ひっ」

腰を跳ねさせて感じる椿の首筋にキスをする。
すでにうっすら汗が浮かび、じっとりとした肌にとがった歯を当てた。
もう椿は制止すらしようとしない、息を殺し、声を殺し、
体を硬くして時が経つのをただ耐えている。

そして、糸の切れた操り人形のように椿の体から力がぬけた。

足音が遠ざかったか、そんな所だろう。
安堵のため息すらつかずにぐったりと俺に体を預けている。

「帰った?」
「・・ハッ・・・ハ・・ァ・・・はい。」
「息まで止めなくてもよかったと思うんだけど?」
「・・・・・ハ・・ハッ・・・・」

もはや返事する気力すら無いようだ。
まあ、チキンな椿が人の足音や声を聞きながら卑猥な事に身を染めるなんて
大きすぎる負担だったのだろう。
ゆっくりベットに寝転がせてやりたいが、尻尾でここまで感じるなら仰向けにはなれないさそうだ。
今日は正常位は無理だろうなぁ、椿にがんばってもらおう。









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