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 その時の彼ら



(無自覚ターニングポイント・おまけ1)

『そこに椿いませんか?』
夜10時をいくらか過ぎた頃世良のケータイに一件のメールが届いた。
居ないぞ。だけじゃあなんかなーと思い、どうした?とぽちぽち打つ。
『今日物貸す約束してたのに椿がまだ帰ってきないんですよ。』
真面目っ子椿が門限破りとは珍しい、送られてきたメールを見て軽い衝撃を受けた。
宮野お前今からうち来いよ、話聞かせろ。それだけ送信した。

「で、椿がここにいるんじゃないかと思って押し掛けて来たんすか。」
「なんだよ、心配して悪いか!アイスハートだな赤崎、ひでー奴!!」
「ひでー奴っていうのはアポなしで押し掛けてくるあんたの事っすよ!」
「だって、まじめな椿が門限破りってありえなくね?」
「俺の所来る前に椿に電話なりメールなりすればいいでしょ!」
「あ。」

「・・・・・・・世良さん、やっぱりあんたって・・・あほだろ!
 ちゃんと脳みそ入ってんのかこの中! 入ってねーからそんなにチビなんだろ」
「いってえ! やめろ!!こめかみぐりぐりすんな!!ってか今ひどい事言ったろコラ!」

ぎゃーぎゃー始まった口喧嘩に宮野は苦笑した。

「すみません、赤崎さん・・。 俺あいつに電話したんですけど電源切ってるみたいで・・」
「そうか、めずらしいな。」
「ほら見ろ赤崎―ぃ!」
これみよがしに騒ぐ世良の口元、いや首を腕で赤崎は押さえる。反対の腕でその腕を押さえて、絞める。
「あんたはちょっと黙ってて下さい、話進まないから。」
「ギブ、ギブギブ! これマジきまってるから、ギャー!」
バシバシ叩いて降参を願う世良さんを目の端に追いやりながら話を進める。
(すみません世良さん。話進めたいんです。)
「椿が約束破ってまで外泊・・・、それも連絡なしに。 考えられねえな。」
「だから誰かといっしょにいるのかと思ったんですよ。」
赤崎は眉をゆがめて考え込む。
「宮野、他に誰確認した。」
「丹さんと浜さん、清さんは確認しました。後、石神さんから返信が帰ってきません。」
「はー、 お手上げだな。」
赤崎の腕の力が抜けた隙にするりと世良が脱出した。

「どうします?クロさんとかスギさんに確認してみましょうか?」
「いや、あの人達の所は行かねえだろ椿。」
「まあ、椿も成人した男なんだし大丈夫だと思うんすけど・・」
「椿の事は明日まで帰ってこなかったら真剣に考えるって事で、とりあえず今日は解散するか。」

世良がまとめた所で宮野のケータイが震えた。

「椿?」
赤崎さん、世良が振り向く。
「石神さんです、 内容は・・・」
そこで読み上げようとした宮野が固まり、不自然に会話が切れる。
我慢できずにケータイを覗きこんだ世良も固まった。
不思議に思った赤崎もケータイを覗く、そこに書かれていた言葉は

『椿、ファンの姉ちゃんにくわれたんじゃね(笑)』




「あいつ、整った可愛い顔立ちしてるしな・・・」
「へたれな所が逆にウケてたりして・・・」
「ははは、冗談になってませんよ石神さん・・・」

(((まさか・・・いや、ありえる。)))
見事に三人の心はひとつになっていた。


翌日、メールした石浜、清川、丹波、石神はもちろん他の多くのメンバーに椿の門限破りは伝わった。
そんな馬鹿なと思いつつも石神の発言が重なり疑心暗鬼になったメンバーは椿を問い詰める。 
その答えがこれである。

「その、大丈夫でした!凄く優しくしてくれて・・・。」


その時の彼らにとって誤解するには十分すぎる状況だったのだ。





・・・世良ごめん。





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