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 無自覚ターニングポイント 3



そそくさと監督はベッドに入った。俺もそろそろ寝ないと、いざ床を片づけんとしゃがむ。
「つっばきー何してんの? 寝るぞー」
何してるって寝るために片づけるんっすよ、そう言おうとして振り返った椿は固まった。
(むしろあなたが何してるんですか? 達海さん!)
達海さんはぺらんと布団をめくってこちらを見ている、つまりそういうことだろう。

「そ、そんなお構いなく、俺床で寝ますから!」
「あ、どこで寝るんだよ。 いーじゃんいっしょに寝れば。それに布団これしかないし。」
「で、でも」
「椿」
「・・・・・・・・・・・・・・はい。」

諦めて布団にいれてもらう、当然ながら一人用のベッドでふたり寝るもんだから肌が重なる、というかくっつかない部分の方が少ない。達海さんの肌は俺より冷たかった。

「同じくらいでよかったな」
「何の話っすか?」
「服だよ、ぴったりみたいだし。」
そう言って手首あたりを指でなぞる。指も少し、冷たい。
「ああ、ありがとうございました。」
「服だけじゃなくて、飯とか、これとか。今度お礼させて下さい」
「べつにいいのに。それよりほんと体気をつけろよお前。」
「若いからって今日みたいな事繰り返すようじゃ、サテライト送りかえすぞ。」
「すみませんでした。」
「わかればよろしい。」
そういうと達海さんに頭をぽんぽんされた。
子供扱いされてるみたいだけど、不思議と嫌じゃない。
冷たい肌が心地良くて、すぐに眠気がやって来た。
このまま寝てしまうのはもったいない、もっと話したい。
そう思ったけど眠気には逆らえなくてそのまま目を閉じた。




「達海さん起きて、朝だよ!」
有里はいつものように達海の部屋に入ると、ひょいひょい散らかった紙やDVDを避けてベッドへと近づく。
「もう、布団とるからね!」
布団を掴んでばさりとはぎ取る、もう遠慮とかそんなものは消え失せた!

「・・・え?」

そこには気持ちよさそうに寝ている達海と椿がいた。達海の腕は椿の頭を抱いており、達海の足は挟むようにして椿の足に絡まっていた。椿はというと有里の存在にも気づかずされるがまま寝続けている、達海の服を着て。

誤解させるには十分すぎる状況だ。

「・・・・・・・・・・・きゃあああああああああああああああああああああ!!!」

叫び声で椿は目が覚めた。
目の前にはうっすら目を開けてぼんやりしている達海がいる、見慣れない風景に疑問を持ち、動こうとして椿は達海に抱きしめられてる事を理解した、そして。
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!!」
悲鳴が重なる。


「うるせーよ、お前ら。」
最後にのっそり達海が起きた。




空はまぶしいくらい輝いている、今日も暑くなりそうだ。
グラウンドで雲一つない青空を眺めていると世良さんにタックルされた、痛い。
「椿、お前昨日どうしたんだよ!」
真剣な顔で世良さんが迫る、かと思ったら赤崎さんにのけられた。赤崎さんに肩を掴まれる。
「体は無事だろうな、椿。」
え? 何を言われているのだろうか。状況がつかめない。
「びっくりしたよ、外泊届も出さずに椿帰って来ないもんだから」
後ろから宮野が声をかけて、やっと状況がわかった。
「すみません、ご心配おかけして。」
頭を下げようとしたら赤崎さんが黒田さんに押し出された。
「朝帰りなんて椿のくせに生意気だぞ! 誰と何してたんだお前!!」
「ってーな! 何するんすか。」
「ああ? お前が邪魔なとこ居るのが悪いんだよ!」
いつも通り口喧嘩が始まって謝りそこねた、えーと、止めるべきか。
「で、本当の所はどうなんだ? 椿」
ドリさんに話しかけられて気が逸れる。なんか、ドリさん楽しんでないか。
口元笑ってますよ。
「その、 大丈夫でした!凄く(達海さん)優しくしてくれて・・・。」
照れながら椿が言うものだから皆一同に固まった。

「「「「「「 椿!!! マジで食われたのかお前!!!!!!!! 」」」」」」

今日も椿は大事な言葉が欠けていた。


「ったく何騒いでんだお前ら。椿、後藤さんが呼んでたぞ、行って来い。」
「おはようございます村越さん! 行ってきます。」
「ま、待て椿! 話はまだ終わってねーぞ!」
世良さんの声を聞き流しながら後藤さんの元に急いだ、後で謝ろう。



「すみませんでした!」

椿は深々と頭を下げた。
「事情は昨日達海から聞いてる、夜遊びで遅くなった訳じゃないし今回は罰金や次ゲーム出場禁止にはしない。けどな、椿今回だけだぞ。」
そういうと後藤はまだ下げている椿の頭をくしゃくしゃを撫でた。その様子を見ながら達海は眉をよせる。
「あいつ、後藤の前だと緊張しねーんだな。」
「だって後藤さん優しいし。」
有里がつぶやく。
緊張で挙動不審な椿はおもしろかったが、なんか、面白くない。
あれ、なんだこのもやもや。

「・・・・まあいいか。」 

頭を切り替えると達海はグラウンドへと踵を返す。
自分が重大な分岐点に立っている事に気づかずに。




サッカー知識無いくせにごちゃごちゃ書きたくてやってしまいました。苦笑いで勘弁して下さい。門限23時はないだろう、とおもったら某チームの寮の門限が22時半だった件。あと、椿の場合女性のファン相手にも受け身だと思う。
「ファン食ってるんじゃ」でなく、「ファンに食われてるんじゃ」ってあたり椿クリオリティ。








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