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 子猫といっしょ



(世良+椿+α)

世良はふと違和感を感じて振り向いた。
直ぐ後ろにいたはずの椿がいない。
辺りを見渡すとグラウンドのすぐ側、屈みこむようにして椿は座りこんでいた。

「おーい、椿 靴ひもか?」

一歩一歩近づいて行くうちに何か変だと気付いた。
椿の手がピクリとも動いていない、いや、手だけでなく体全体がまるで凍りついた如く固まっている。

椿にたどり着いた世良も屈みこむ、そして椿の足元を見て叫び出したい気持ちになった!
慌てて両手で口元を押さえ、ぐっと気持ちを抑えつける。
同時に椿から強烈な視線を感じた。

「た、助けて世良さん・・・・!」

椿の足元には、それはもう小さくて愛らしい子猫が寄り添っていた。


すっかり安らいでいる子猫とは対照的に椿は愛らしい子猫に触れようとして触れられずふるふる手が震えたり小さな体を蹴らないよう、妙に足に力が入ってる。

・・・パニック寸前である。

(おちつけ、椿!大声とか急に動いたらだめだぞ、おどろかしちまう!)
(は、はい世良さん)

好奇心にあふれる子猫が世良の存在に気付いた。
いくら世良の身長が低かろうが子猫にとっては巨漢に違いない。
しかし、逃げるどころか逆に世良に近づき、カリカリと世良の靴をひっかいている。

「うぉ!」

出かかった叫び声を世良は両手で口元を押さえ我慢した。
椿も口元に人差し指を当て、世良さん、しー!と小声で非難した。

落ち着きを取り戻し始めた椿とは逆に世良が今度はパニック寸前である。
先ほどは兄貴風を吹かせてはみたが、世良だってこんな状況は得手では無い。

(かわいいなぁ、こいつ)

(野良猫っスかね、人懐っこいなあ)

(・・・・世良さん?)

さっきから世良は返事すらできず子猫を凝視している。
かわいいけど、困るんですよね、わかるっスよ世良さん・・・。
生温かい目で椿は世良を見ている。

椿はその辺に生えていた雑草、通称猫じゃらしをプチっと摘むとチラチラと子猫の目元で動かした。猫じゃらしを追って、したん!と動く子猫を誘導し世良の足元から離していく。



「ん、何やってんだアイツら」
「んー、子猫と子犬がじゃれあってる。って所かな」

かわいいねえ、といつもの調子でジーノが答えた。
「そういえば、僕って犬に好かれる体質みたいでね」
達海の視線が椿へと向かう。そっちの犬じゃないよとジーノが正した。

「犬と散歩中のレディーやマダムとちょっとお話しようとすると、いつも犬が僕にじゃれついてきて、それどころじゃ無くなってしまうんだ。僕の魅力って犬にまで分かるみたいで困るよ。」

「ふーん」
達海は興味が薄そうだ。

「それって、威嚇されてませんか犬に。」
すれ違いざまに赤崎がさらりと言い切る。

「ひどいなあザッキー、好かれてるか嫌われてるか位は分かるよ。たとえ犬であろうと嫌われる事はしないしね、誰かさんと違って。」






・・・一方こちら東京ヴィクトリー、グラウンド内。

「今日城さん家行っていい?」
「駄目だ、またアイツが怯える。」

「ちぇー、城さんのケチ。」
「お前がもうちょっとでも犬と相性が良ければ話は別なんだがなぁ」

「いいもん、別の犬と遊ぶし」
「お前と遊べる犬なんていたのか。」
「ひでー!」

心底驚いた風に城西がいうもんだから持田がぷんと頬を膨らませた。


同時刻、離れた場所に居る椿は寒気がしている。
予感が確信に変わるのまでそう時間はかからないだろう・・・。




城さんはゴールデンレトリバー飼ってそう、という捏造すみません。
持田さんはたいてい犬に怯えられるよ。
堺さんに怒られて子猫が逃げるまで世良と椿は子猫といっしょ。
珍しく世良と椿に視線と表情で責められて堺さんがこっそりしょげる。
気付かなかっただけで堺さんに悪気は無いのです。





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