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 乱酔



性描写注意!







「ハ・・ハッ・・」
椿の腰が動く度、ぬちゃりと卑猥な音が部屋に響く。
熱で赤みを帯びた椿の体につつっと汗が垂れ、ぼとりと俺の腹に落ちる。

絶景だなあ。

俺に跨り、欲望のままに腰をくねらせる椿は卑猥でたまらない。
油断すると時々ギュウと絞めつけられ、あられもない喘ぎ声を晒す羽目になる。
・・・現にそれで1回イってしまった訳だが今はそのことには触れないでおく。
まずこの天国と錯覚しそうになる地獄から抜け出す手を考えなければ。


なんでこうなったっけ。
達海は刺激と快感で溶けた頭を無理やり動かした。





カチカチと音を刻む短針が1の数字を指す頃
いつもの部屋でいつも通り達海はテレビに映る試合を見ていた。

分析し、気付いた事を紙に書きなぐる作業を続けていると突然ガチャリとドアが開いた。
ノックもせずだれだと振り向くと硬い表情を浮かべた椿がいた。
DVDや書き散らかした紙束を避けて歩く足取りはしっかりしていて、
だからこそ異変に気付くのが遅れた。

「おーい、ノックぐらいはしようよ。寝てたらどうすんのこんな時間に・・」

椿の顔は赤くほてり、独特の匂いでこの男が酔っ払いと化した事に気付いたのは自分がベッドに押し倒された後だった。
とろんとした目つきで俺を見下ろす椿は妖艶で煽られた心臓が血液を送り出すスピードを速めた。
ようするに動揺していたのだ、俺は。

「どうした椿?今日はやけに積極的じゃねーか。」

頭の中では混乱しても、よく動く口に感謝。
しかし、俺の軽口は椿に見事にスルーされた。
それにしても、いくら酔ってるとはいえ会話が通じないどころか、返事がないってのはどういうことだ?と思って椿を見上げたら、普段と変わりない表情で逆に怖くなる。
酔ってるよなあ?お前。

「達海さん、ごめんなさい」
そう告げられると部屋に落ちてたタオルで腕をひとまとめにして縛られた。
いよいよ動揺するが、椿はというとそれ以上口を開かずもくもくと作業を続けた。
またたく間に下着ごとズボンを脱がされ、かろうじて足首で絡まっているだけだ。

「・・・つ、椿!?」
制止するのも間に合わずナニを銜えられ、言葉を失う。
夢でもみてるのかと思う情景が目の前に在って、衝撃と興奮にくらりと眩暈がする。
このまま流されたいと思う誘惑をなんとか振り切り腹筋に力を入れて起き上がろうとしたらキスで防がれ結局ベッドに逆戻りすることになった。

せめて鍵をと理性が叫ぶが、目の前の媚態に酔ってどうでもいいとすら思った。




あー、で、そのまま流されて今に至るんだよねえ。
結局何もわからん、だって最初から今日の椿は変だったし。


頭上で縛られた両手がひどくじれったい
犯してるのは俺のはずなのに犯されてる気分だ。

ぼたり、また椿から雫が垂れる。
汗かと達海は白くかすんだ視界で逆行の中にいる椿の顔を見上げた。
「!」
表情は影になってわからない、それだけに不安に感じる。
でも、こいつもしかして・・。
確かめたい、伸びるとこまで両手を伸ばすが
その手は椿の胸元くらいまでしか届かない。

「椿」
達海は顔を歪めた、掠れた声で労わるように話しかけた。
「お前、何泣いてんだよ。」
体が繋がる水音に紛れて、椿のぐずる音が小さく響いた。

ぐずりと泣く様は初めて夜の自主練習を見つけたあの日を思い出す。
たしかあの時は自分自身の不甲斐無さからくる苛立ちからだったか、
じゃあ、今はなんだ?

休むことなく、動いていた椿の体がピタリと止まる。
荒い息を整えると、震える声が伝わって来た。

「わかってる、わかってるんっすよ!監督は監督だから俺のもんじゃない、
みんな平等で当たり前だ、後藤さんはGMだし監督と話さないといけない事もいっぱいだ、
それに歳も近いし俺の知らない監督もたくさん知ってて当然だ。」

ぐずっと椿が息を吸う。

「でも、欲しい。自分を見てほしい。もっと話したい、達海さんの事が知りたい!
 達海さんが・・・・、欲しい。」




凄い衝撃を受けた。
椿とは一度も喧嘩した事が無い、いつも不満を言わないから
こんな事思っていたなんて驚いた。

心の奥底で罪悪感と安堵と嬉しさがふつふつ湧いてくる。
こいつ自身の純粋な性格と相まって嫉妬や独占欲とは無関係なように感じていた。
その事に寂しさも感じてはいたが望めないと諦めていたのに。

そういえば最近仕事の多忙とも相まって、椿と接する時間が皆無だった。
そりゃあ不安にもなるだろう。

それにしても・・・・。

ぼたり、ぼたりと腹に落ちる雫を感じて、じれったくてたまらなくなった。
こんな風に両手を縛られてちゃあ、椿の涙を拭いてやることも出来やしない。

「椿・・・はずせ、これ」
ちゃんとお前を抱きしめたい。そう話しかけるとビクンと椿の腰が震えた。
その動きに、繋がったオレ自身も苦しめられるものの何とか堪える。

長い時間拘束されていた手が解放された。

手の自由を感じると、まず体を起こし椿を抱きしめた。
顔を引き寄せ舌で涙の痕をなぞる。ゆっくり口づけながらもう一度ぎゅうと抱きしめる。
何も不安に感じる必要なんて無いのだ、と自然と緩む口元を見てか椿の力も緩む。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめ・・ぐす」

止まることなく涙を流す椿がとても愛しい。
気が抜けた椿は酒が入ってる事もあって椿の本心そのものである。
傷つかないように、もう一度確かめるように抱きしめた。

きっと酒が無ければ不安も嫉妬も口に出さなかったのだろう。
困るが、嬉しいのだ。
この際だから俺も自白してしまおう。

「椿、俺は持田が羨ましく思ってる」

あやすように椿の背を撫でた。

「だって、あいつは真正面からお前の前に立てる、
そのうちお前の思考全てを奪って、お前とあいつだけの世界ができちまう。
出来る事ならお前をひっこめようかと思うぐらいだ。」

「あと、ジーノ。あいつ事ある事にお前を連れて歩いて自分の物みたいな言い方しやがる。」
「それ、ただのパシリじゃないですか・・。」
「それくらい俺もお前が欲しいんだ、気づけ大介」

名前を呼んでやればぎゅぎゅっと強い力で抱きしめられた。
上からも、下からも。

「ごめん椿、そろそろ動いて。もう限界・・、イきてぇ。」

ずっと熱い椿の中に包まれていたのだ、そのまま放置されるのだけは勘弁してもらいたい。
平気なふりしてごまかしていたが、さすがに辛い。
それだけ言うと、俺はもう一度ベットに沈んだ。

椿がおれの胸に手を乗せて、ゆっくりと上下に動く。
ハァハァと、荒い息を吐き出しながら椿の腰に手を当て下から突き上げた。

「・・・っん!」

椿が小さく喘ぐ。
体重と重力によっていつもより深い結合にたまらない気分になる。
この期に及んで逃げようとする椿の腰を引き寄せ強引に押し入った。

「椿こら、なに逃げてんだ。」
「な、なんかヤバイです、た、つみさ、・・クッ、ん。ヤバ、う、」
椿はなんとか腰を使いながら繋がらない言葉を無理やり吐き出した
「凄い、ひ、怖い・・違っ、って・・」

話の続きが気になるが突き上げる事は止められそうもない。
それにしても気が抜けたからか椿に余裕が無さ過ぎる、
さっきはあれだけ好き放題してくれたのに、動きすぎて疲れたとか?

「ハァ、ハッ 何が、怖くて、ヤバいの? 椿」
「ん、ん、ふ、ん、ヨ過ぎて、俺が、ぁ、怖い、ん」



結局椿の言葉は繋がらなかったけどいいや。
もう言葉は要らない、とにかく目の前の男が欲しかった。






――――――――――――――

お道具箱のけしかすさんの「酔って襲い受けになる椿」という言葉に、何その素敵シチュエーション!!と思って勢いで書いてしまいました。

翌日椿全て記憶があるものだから土下座して謝ります。

急に椿が感じ始めたのは自慰のようなセックスから、感情が入り始めたから。
それと達海さんも俺が欲しかったのかという発見が嬉しかったから、とか。



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