いたずら
相性というものがある。
生き生きと輝く選手もいれば当然監督と喧嘩ばかりする選手もいる。
「くっそ!達海のやつめ」
いらだちを隠さず、ずんずんベンチに戻る黒田は
どちらかと言うまでも無く後者に属される。
いや、厳密に言えば相性は悪いわけでは無い。
現に黒田は今シーズンになって力を活かせている。
ただ、短気で単純な黒田が曲者の達海にいらいらするだけである。
「あ」
そんな黒田はある物を見つけた。
赤い缶に白いロゴ、まだ口もあけてないそれはいつも、監督が飲んでいるものである。
ドクターペッパー
黒田はそれに手を伸ばし、ガガガガガガ、と勢いよく振り回した。
「お、おいクロ?」
杉江が止めようとしたが手遅れだ。
「へ、たまには痛い目見やがれ!」
(子供かおまえは)
心の中で杉江は突っ込みを入れる、声に出せばこちらにとんでもない情熱が向けられる。杉江はその熱さを尊敬しているが、向けられたいわけでは無い。
「さ、隠れて様子みるぞ!」
「・・・はぁ。」
もう、杉江は黒田につっこむ気すら無いようだ。
何も知らない達海がベンチへと帰って来た。
さっそく開けようとする、が。
カツ
カツ
指は滑るばかりで開きそうな様子が無い。
『!!!!』
「おーい、椿ちょっとー」
「あけてくんない? 俺昨日爪切った所でさー」
「あ、はい。」
いまさら出て行くわけにもいかず、じっと見る事しか出来なかった。
そして、案の定・・・・・
カツ!
ブッシャァアアア!!
「うわぁああ!」
哀れ椿は荒れる炭酸の餌食になった。
ぽんっと達海の肩にジーノは手を乗せる。
「困るなータッツミー、うちの子いじめないでくれない?」
「え、今俺何もしてないんだけど」
「・・・・・、薬臭いです。」
スンスンと鼻を鳴らすと椿はガクーンとうなだれている。
「・・・椿に謝っとけよ、クロ」
「・・・・・・。」
後日、ミスした椿を無言でフォローする黒田がいたらしい。